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 九月十五日、北海道で行われた中小企業団体全国大会で、全国から選ばれた組合功労者が晴れの表彰を受けた。その一人である。
 「大変名誉なことですが、受賞は組合員の結束があってこそのもの。まずは組合関係者にお礼を申し上げなければ」と周囲に感謝する。
 昭和四○年代後半、全国一ともてはやされた富士市の製紙業界は、一方で水質汚濁などの公害対策に追われていた。各工場は設備導入を進め排水浄化に努めたが、今度は工場内に大量発生するPS(ペーパースラッジ)の埋め立て処分で新たな問題が発生。対応に迫られた富士市は、焼却処分の条例を打ち出した。
「組合設立に動き出したのは、そんな時。大手の資金力なら独自の焼却施設を持てるが、中小工場はどうしたらいいのか。そこで、地元鷹岡地区の同業者に、共同化による焼却施設の建設を呼びかけたんです」。
 昭和四八年の組合発足に際しては理事に就任し、中心人物として建設計画を推進。「特に、臭気などを心配する焼却施設付近の地域住民から猛烈な抵抗を受けた」が、持ち前の実直さと粘りで個別訪問を繰り返し、公害防止協定の締結にこぎつけた。
 平成一○年、同組合の理事長に就任するや、惜しみなく公害防止への積極投資を続ける。翌十一年には二億円を投じて大型集塵機を、昨年は四億五千万の脱臭装置を完成させた。

全国大会で組合功労者表彰 
環境対策で製紙業界の 
発展支える
 
     クローズアップインタビュー 
岳南第一製紙協同組合 
理事長 
里和 治 氏 

 組合設立から三十余年。今や自身をのぞいて、組合設立当時の役員は現役を退いた。「だからこそ、公害防止の実践を次代に示していくことが自らの使命と考えています。」
 業界では最も業暦の長い会社の一つ、富士里和製紙株式会社の三代目社長を経て昨年会長職につく。大学卒業後、銀行に勤務したものの落雷により工場全焼。家業の危機を前に銀行を退職し、絶望に打ち沈む父親を励ましながら工場再建を図った。
 最近は、「何事もコの字に攻めてはいけない。なぜなら、相手は追い詰められ逃げ場がなくなってしまう。生きることも会社経営もバランスが大事」が口癖。他人の意見を聞きその立場を尊重しつつも、粘り強く自身の意見を浸透させる。業界の利害が対立し意見集約ができずにいるときは、その中心に身をおき協調と連帯を説いた。
 逆境にあった青年期に多くの関係者に助けられた恩を忘れず、家庭裁判所調停委員や市教育委員など社会奉仕にも惜しみなく身を投じてきた。
 自宅には「寅さん」シリーズ、全四八巻を所蔵。折に触れビデオ鑑賞に興じる。昭和五年三月生まれ。




中小企業静岡(2005年10月号No.623)