ヘチマを原料に化粧品開発
企業組合の設立は、平成十年十月とまだ新しい。組合員十九名はいずれも農家の主婦である。現在、企業組合設立のブームであるが、通常の協同組合と違い、企業組合の場合は、組合員は出資者であると同時に、組合の仕事に従事することが義務づけられている。したがって、農家の主婦もやり、組合の仕事もこなすという役割がある。
設立は新しいが、その発端は昭和六〇年に溯る。当時、渡辺理事長は、中川根町商工会婦人部の会長をしていた。
「(当時)お茶は横ばい、製材は外材に押され、過疎化など暗い話が多かった。町の活性化に役立つものはなにか考えた」。その結論が町の特産品開発であり、それを農家の主婦で販売しようという発想である。
中川根町はお茶の生産地として有名である。お茶は現在、機械揉みであり、機械にこびりつく茶渋を洗浄するために、川根ではヘチマを農家が栽培していた。ヘチマタワシとしての利用である。そのヘチマを活かす手はないか。
昔からヘチマは美人水として利用されてきた。ヘチマに含まれる蛋白質、ビタミンC、ペクチン、酵素、数種のサポニンは皮膚の老化防止に役立つとされる。そこで生まれたのが組合ブランドの冒頭紹介した化粧品「ニートリィ」である。当初からヘチマを何かに商品化しようという考えはなかった。近隣婦人部の集まりがあり、その時のアドバイスであったという。「川根にはヘチマがあるじゃない」(同)という意見が商品開発のきっかけである。
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▲組合商品の販売所の中心
となっている「四季の里」。
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お金じゃなく地域活性化が目的
当初は任意組織として細々とニートリィを販売していたが、やり続けるうちに販売数量も伸び、これ以上任意組織で販売を続けるには限界に達した。
「利益が出てきたんです。税務署からも連絡がきたりして、はじめはどうしよう、どうしよう」(同理事長)の日々が続いたという。
その当時、中央会では任意グループの組織化を積極的に進めており、説明を受けるうちに企業組合として再出発することが固まってきた。
「株式会社という手もあったんじゃないですか」との問いに、
「利益の追求ではないからです。地域の活性化というのが目的だったんですから」(同)と。
任意組織時代の十四人に新たに五人のメンバーが加わり、再スタート。
現在では、主商品である化粧品ニートリィをはじめ、椎茸、竹の子の煮物「春茸ちゃん」(はるこちゃん)、蕎麦饅頭、そして同じくヘチマを乾燥させて帽子、マット、インテリアなどに加工した小間物など商品も多彩になってきた。
組合の商品は中川根町にある「四季の里」、郷土博物館「フォーレ中川根茶茗館」、川根温泉、金谷の「お茶の里」などで販売されている。売上も好調という。「またまだ中川根には素材がたくさんあるんです。もつと商品開発を手がけたい」と意欲満々だが、「ただ忙しくて手が回らない」と笑顔を見せる。
中川根の自然を材料に、地域活性化をめざす企業組合ニートリィ、組合員の表情も明るく笑顔に満ちている。
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