先般、技能五輪全国大会が「技能五輪しずおか’99」と銘打ち開催され、全国から参加した七〇〇名を超える若者がそれぞれの技を競った。
最近、若者の技能離れが云々される中、熱心に、懸命にその技に取り組む選手諸君の姿を見るにつけ、ものづくり日本もまだまだ捨てたものではないとの感を強くした。
言うまでもなく我国産業の原点は「モノ」づくりであり、その重要性は変わらない。そして、こうした人材を育てているのは中小企業である。
私が知っている工作機械業界にもこの不況が長期化する中、急成長している中小企業がある。
この企業は、ミクロンを競う超高精度の研削盤をなんと人の手、匠の技で製作することで成功している。そして若い人を匠に育てていく技を持っている。この企業のサクセスストーリーは、技術や情報を支えるのは機械ではなく、人間そのものであり、熟練技術の維持と継承がしっかり行われているということに原点がある。
最近は、とかくベンチャーばかりが注目されがちだ。その大切さは否定しないものの、本当の日本の強さはこうしたモノづくりの現場で底辺を支えている多くの中小企業にあり、技能を持つ労働者にある。いかに省力化・情報化が進もうとも、その根底は人間の技であることには変わりない。
そして、若き技能者は起業精神も旺盛と聞いている。中小企業はこのところ開業率が低下し、廃業率が上昇するなど「少産多死」の状態が続いている。まさに今、起業家時代を迎え、そうした若者を育てることが、肝要になっているのではなかろうか。
静岡県では、今年を〃ものづくり元年〃と位置づけているという。こうしたイベントを契機に一層技能が尊重されることを、そして何より日本の技術を底辺で支えている中小企業の役割が再認識されていくことを期待して止まない。
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