|
||
湖西市商業協同組合 新居町商業協同組合 |
||
地域商業活性化のために二つの組合が大同団結! =ポイントカードシステムを共同研究= |
||
前ページへ戻る (顧客固定化に効果大!「ポイントカード」) |
||
組合が連携して、ポイントカード事業を展開 |
||
消費者の流出防止策が最大の課題 |
||
浜名湖西岸に位置する湖西市は、浜松駅から東海道線で西に二五分、そして西には愛知県豊橋市が控えている。 湖西市商業協同組合は、共通商品券の発行を目的に昭和六二年十二月に設立。組合員は二〇〇人を超えるものの、事業主の高齢化や後継者難などからその数も減少傾向にあるという。 一方、浜名湖と太平洋に囲まれた風光明媚な環境に恵まれた新居町。 ここで活動する新居町商業協同組合は、隣接する湖西市の組合より一年半早い六一年九月に組合を設立。湖西市と同様に商品券の発行を事業の柱に活動している。 通産省が発表した「商業統計(平成六年)」で、この二地域の商業(卸・小売業)の状況を見ると、商店数では、湖西市が五〇八店、新居町は二八三店舗という状況にある。 また、一年間の商品販売額は、湖西市が四、二六〇千万円で、十年前の昭和六〇年と比較すると約二五%増加している。一方、新居町は、販売額が二、三六三千万円、増加率は約三七%という結果がでている。 しかし東に浜松市、西には豊橋市という二大都市の狭間にあって、この二市へ流れ込む消費者は五〇%を超える状況にあり、地元の商業者は、いかにして顧客を地元に引き寄せるかという大きな課題を抱えている。 |
||
平成二年に商品券の利用を相互乗り入れ |
||
二つの組合が設立当初から取り組んでいる共通商品券は、湖西市商業協同組合では、五百円券一種類を発行。表には、地元にゆかりの深い豊田佐吉像があしらわれている。 この組合の平成八年度の商品券売上は約四千七百万円。地元商業の振興に熱心な行政当局も、敬老の日のプレゼント用などに活用するなど、積極的に協力している。 この事業では 先輩格 となる新居町商業協同組合では、五百円券と千円券の二種類を発行。七年度実績で約三千五百万円の商品券売上を残している。 しかし、隣同士の街でありながら、利用者にとっては、二つの商品券を使い分けなければならないという問題もあり、両組合で協議を重ねた結果、平成二年十二月からは商品券の相互利用を開始した。 地区の境界に商業者が比較的多く集中している中で、湖西、新居の両地区で自由に利用できる体制が整ったことは、利用者にとっては大きな魅力となったに違いない。 しかしこの事業とて、消費者の流出という課題を根本から解決する 万能薬 にはならない。 折しも湖西地区では、大型店の進出が具体化するなど、地元商業者にとってはますます厳しい環境を強いられる状況にあった。 地元の小さな事業者だからこそできる、きめ細かなサービスを顧客に提供しよう! こうした心意気が、商品券だけでなく、ポイントカードについても相互利用する発想を生んだのである。 |
||
表には、湖西市とゆかりの深い豊田佐吉の肖像が描かれている。 |
||
中小の事業者ならではの、きめ細かなサービスを! |
||
ポイントカード事業は、湖西の組合では平成六年から、新居町では七年からそれぞれスタートしている。 これを統一していこうと検討を始めたのが、二年前。母体となったのは、商品券の清算会である「商品券相互利用協議会」だ。 この会議には、毎回両組合の正副理事長が出席し、情報交換する場にもなっていて、ポイントカード利用客からも強い要望があること、新居町で使われているポイントカードの端末機の更新時期が近いことなどから、この更新時期である今年四月にあわせて相互利用に踏み切ることが決められた。 ポイントカードのシステムは、それぞれ違う方法で行われていたが、検討の結果、ポイントを買い物の都度加算していく 湖西方式 を採用。カードの名称も、湖西で使われていた「ひまわりカード」を継承していくこととした。 このシステムは、買い物金額百円につき、一ポイントをプレゼントするやり方で、三ポイントで「ひまわりカード」の表にマークがひとつ印字される。カード一枚で三〇〇ポイント貯まるが、満点になると、カードの表には ゴール という文字が印字され、利用者に満点になったことを知らせる仕組みになっている。 相互利用が実現したことで、二地区あわせて一七〇店舗が加盟したことになるが、両組合では、利用者がポイントを貯める機会が増えるよう、今後さらに多くの店に、この事業への参加を働きかけていく予定だ。 |
||
ポイントが貯まる楽しみを演出 |
||
「烏山」の例でも見てきたとおり、こうした事業を成功させる最大の鍵は、何といっても、カードを持っている顧客に、ポイントを貯める楽しさを演出することにある。 湖西市と新居町のケースでは、「満点カードはまちの第三の通貨」をキャッチフレーズに、ひまわりカードを、紙幣、そして地区で発行する商品券に次ぐ第三の通貨として、満点カードと引き換えに五百円分の買い物ができることとしたほか、指定金融機関では同じ額を預金ができるようにした。 また利用者は、この満点カードでさまざまなイベントに参加できるが、組合では、このイベントを、「ポイントカードに魅力を持たせるためのイベント」と「ポイント カードを回収するためのイベント」という二つのコンセプトから事業を展開している。 「魅力を持たせるためのイベント」は、招待旅行や人気チームの野球観戦チケットなど、比較的経費がかかりポイント回収の直接的効果はないものの、利用客が ポイントを貯めよう という動機付けにつながることを目的にイベントを打ち出している。 一方、「ポイントを回収するためのイベント」では、直接売上に結びつく効果をね らって、常時、満点カード十八枚を一万円分の共通商品券と交換しているほか、年四回、満点カード一枚(五百円相当)で七百円の買い物ができる プレミアムひまわり満点カード というイベントも行っている。 いずれにしても、ポイントカード事業の成否は、ポイントを貯めたあとのサービス(特典)にかかっており、ここが事業担当者の腕の見せ所でもあるわけだ。 |
||
|
||
商人の理論から消費者の理論へ |
||
昨年末、「’97歳末謝恩セール」と銘打ったイベントが実施された。 このイベントは、買い物千円につき ゆめ宝くじ 1枚をプレゼントするというもので、当選者には現金がプレゼントされる。 買い物客に好評を博したこの企画は、二つの町の商工会と組合が合同で主催した。 このイベントには相当の資金や労力が必要だったが、それぞれの地区の商工会と組合が一致協力して取り組んだことで実現した。事業の成功と同時に、共同で事業を行うことの意義を確信する結果となった。 これまで紹介してきた共通商品券の発行やポイントカード事業は、いずれも湖西市と新居町の商工会が事務局を受け持ち、献身的な努力で事業を支えている。 二つの組合がひとつの事業を一致協力して実施できたのも、この商工会の存在があったればこそといえる。 隣接する地区の商工会として、年二回の割合で情報交換する機会を設けるだけでなく、それぞれの商工会の事務局長が入れ替わる人事交流も行われるなど、日頃から密接に連携してきた。 このように円滑な意思の疎通が図られている商工会が、商品券やポイントカード事業の事務局となっていたことが、二つの組合がスムーズに事業の連携が図ることができた大きな要因となっている。 そして見逃してならないのが、地元商業者のポジティブな意識である。 一般に、商業者は、「自分の店はカワイイが…」という意識が強いものだが、この二つの組合は、 お客さまに喜んでもらえる商人でありたい という、消費者の側に立った考えを持っている。こうした意識があったからこそ、二つの組合がそれぞれの理屈で張り合うことなく大同団結できたといえる。 今の時代にあって、儲けさえすればよいという商人意識は通用しないほど、商業の流れは早く、しかも大きく変化している。利益=顧客の満足という図式が描けない商業者にとっては、ますます商売がやりにくくなる時代となった。 そして組合自身も、 島国根性 的意識を捨て、チャンスがあれば組合同士が積極的に連携し、補い合いながら事業を展開していく時代がきているようだ。 |
||
|
||
|