「労働」

「男女雇用機会均等法の改正と規制緩和」
求められる、「性」に差別されない職場づくり

 
(株)大和シンク・エージェンシー
取締役社長 石 橋 達 也
 静岡市泉町4-29
 TEL 054-285-0666

昭和六一年に施行された「男女雇用機会均等法」の一部がこのたび改訂されたと聞きます。改正のポイントについて解説してください。
 またこの中で、これまで規制されてきた女性の時間外・休日労働や深夜業の規制が解消されたといいますが、この改正に伴って企業がどのような点に留意すべきか教えてください。



 小子化・高齢化社会が進む中で、生産人口の減少が予想される中、高齢者の雇用活用と同様に、女性労働力の活用が求められています。
 実際、女性の雇用者数の大幅な増加、勤続年数の伸長や職域の拡大がみられ、それは女性自身の社会参画や就業意識の変化と同時に、一般社会の意識や企業の取り組みも大きく変化しています。
 週四〇時間労働制の法制化により、労働時間は短縮の方向にあり、育児休業制度や介護休業制度の法制化に代表される職業生活と家庭生活の両立を可能とする条件は確実に整備進展の方向にあります。
 しかし、昨今の経済情勢の厳しさは、そうした女性に関する条件整備の進展度合いが鈍りがちであることも否定できません。
 働く女性が「性」により差別されることなく、その能力を充分に発揮出来る雇用環境を整備し、働きながら安心して子供を産み、育てることの出来るような配慮が、改正男女雇用機会均等法に埋め込まれています。
 この改正法律案は平成九年六月十一日に可決成立し、平成十一年四月一日から施行されます。
 母性保護に関する規定は、今月つまり平成十年四月一日から施行されます。

男女雇用機会均等法改正のポイント

一、母性健康管理の義務化(本年四月一日から)
 従来は「努力義務」であったものが、今年の四月から「義務化」と改正されまし た。
 妊娠中および出産後の女性労働者が保健 指導または健康診査を受けるために必要な 時間の確保や、その指導に基づく「勤務時 間の変更」や「勤務の軽減」など必要とするを事業主に義務づけされました。

、平成十一年四月一日からの施行
.募集・採用・配置・昇進の「努力義務」が「禁止」となります。
×営業マン募集→○営業マン(男・女募集)
×大卒男性十名、女性二名→○大卒十二名
×男性四〇才未満
     女性三〇才未満→○四〇才未満
×女性のみ未婚者  ×女性のみ自宅通勤
×営業職は男子のみ ×女性は補助職のみ
×女性は一定役職どまり(係長まで)
×婚姻・子供がいる女性のみ一定役職どまり
.教育訓練は「一部禁止」から「禁止」となります。
 労働省令で男女差別的取扱いが禁止されている基礎的な教育訓練は次のものです。
×新入社員対象の職業に必要な基礎的能力付与の教育訓練。
×最小単位の組織の長以上の者を対象としたその地位に必要な能力を
 付与する教育訓練。
×職業上の資格など、業務に必要な能力を付与する教育訓練。
3.「セクシャル・ハラスメント」は、従来規定はありませんでしたが、事業主の配  慮義務が規定化されました。
(「セクシャル・ハラスメント」に関しては別稿で細述することとします)

関連の労働基準法改正のポイント

一、女性の時間外・休日労働および深夜業労働
 現在は次のように就業規制されていますが、その規制が解消されます。
 【現在の規制・労働基準法第六四条のニ】
工業的事業(製造業など)
   時間外労働 一週六時間、年間一五〇時間
   休日出勤は禁止
非工業的事業(商業など)
   時間外労働 四週三六時間、
   年間一五〇時間
   休日出勤は四週につき一日
深夜業労働は、【現在の規制・労働基準法第六四条の三】特別の例外を除き禁止。
、多胎妊娠における産前産後休業期間は、現在十週間とされていますが、改正では十四週間となります。
 現在は規制されていませんが、平成十一年四月一日から、育児・介護休業法により育児または家族介護を行う労働者の深夜業の制限が設けられます。
 時間外や深夜労働に関して、特別の例外を除いてほぼ男性と同じ扱になりますが、それらは従来通り労使間の時間外協定が必 要で、その締結にあたり家族的責任を有する者への取扱配慮をする必要がありましょう。

中小企業静岡(1998年 4月号 No.533)