湖西市商業協同組合
新居町商業協同組合

地域商業活性化のために二つの組合が大同団結!
=ポイントカードシステムを共同研究=

 今、地域文化の担い手ともいうべき地域商業者や商店街が危機に瀕している。
 郊外には大型店が相次いで出店し、車社会が消費者の行動パターンの変化に一層拍車をかけた。結果、商店街ではシャッターを閉じる店が目立ち始め、かつての中心商業地そのものが空洞化するという事態すら招いている。
 今回の特集では、消費者の流出に歯止めをかけようと、地区が隣り合わせの二つの商業関係組合が一致協力し、「ポイントカード」の相互利用を研究した事例を紹介。
 この事例を通じて、商業関係組合の役割や組合間連携のあり方を考えてみる。

顧客固定化に効果大!「ポイントカード」
個店の力と組織の力を結集するとき

 よく「消費者の意識が変わった」といわれる。
 その顕著な例が、低価格指向である。
 確かにバブル崩壊後、よりよいモノをより安くという考えは定着した感が強い。
 事実、取扱い商品を限定して品揃えに奥行きを持たせ、低価格を売り物にする カテゴリーキラー と呼ばれる業態や、アメリカの子供用品専門店「トイザらス」のようなパワーセンターの出現は、大きな話題を呼んだ。
  価格破壊 という現象の背景には、つくる側や売る側が、商品そのものの差別化が難しい時代の中で、詰まるところ 低価格 で勝負せざるを得ない…という状況に追い込まれているという一面がある。
 しかし、消費者が知恵をつけ、ポリシーを持つようになると、これだけコストがかかったから販売価格はこうせざるを得ないというような売り手意識は通用しない。
 こうした難しい時代だからこそ、個店の顧客サイドに立った創意工夫が一層求められるのと同時に、それだけでは対応仕切れない顧客へのサービスを実現するために、組合組織がますます必要になる。
 そして今、商業関係組合で盛んに取り組まれている事業のひとつに「ポイントカード」がある。

ポイントカードのシステム

ポイントカード―。
 基本的なシステムを、図-1を見ながら確認してみると…
 まず、加盟店は、顧客に渡すポイントカードと、一定のまとまったポイントが記録されたポイント登録カードを組合事務局から購入する。そして、ポイント登録カードから自店の端末機にポイントを入力する。  
 顧客が買い物をした際、その買い物金額に応じて自店に登録したポイントを差し引き、顧客に発行したカードに記録する。
 顧客は、蓄積されたポイントに応じて、値引きサービスが受けられたり、景品がもらえたり、イベント企画に参加するといったサービスが受けられるというものだ。
 一方、金銭的な流れはどうかというと、例えば一点一円で一、〇〇〇点が記録されたポイント登録カードを加盟店が組合から購入し(つまり組合に千円支払う)、一、〇〇〇ポイントをためた顧客が、このポイントカードを九百円として買い物に使ったとする。
 加盟店は、このお客に対して千円の費用で九百円回収したことになり、差額の百円は、ポイント事業の運営費等に充てられる。

最大の効果は、顧客の固定化

 試みに、インターネットで、ポイントカードをキーワードにして検索してみると、約八万件のホームページが検索され、盛んにシステムや特典をPRしている。
 こうした数字を引き合いに出すまでもなく、ポイントカードによるサービス展開は、さまざまな地区や組織で採用され、一定の効果を生み出している。
 ポイントカードの最大のメリットは、顧客の固定化だ。
 ポイントを貯めて一定のサービスを受けるという、商品の購入など本来の目的にプラスされた特典が、顧客にとっては店を選ぶうえでの動機のひとつとなる。
 そして、もう一つ見逃せないのが、来店するお客の情報が管理できるという点だ。
 カードを発行する際、入会申込書に、名前や住所・電話番号、そして家族構成や誕生日、趣味などを記入してもらうことで、来店者の情報を収集し、DMなどで自店の情報を顧客に発信することができる。
 また、いつ、どんな品物をどれだけ買ったかという記録と合わせれば、品揃えや陳列方法、さらにはPRの仕方まで研究することができる。
 しかし、こうした効果を生み出すには、POSレジとカード処理機を連動させて、買った品物の情報をデータベースに記録するなどのシステムが必要になる。
 こうしたシステムには、それなりの費用がかかるので一朝一夕には構築できないものの、ポイントカードに付随した効果として見逃せない魅力であることに違いない。

スタンプ制度との違い

 このポイントカードと同じようなシステムに「スタンプ制度」がある。
 この歴史は意外と古く、一八八〇年にイギリスで発祥したといわれている。我が国では、明治四五年に北九州市の呉服店がスタンプ制度を導入したというから、九〇年近い歴史があることになる。
 ご存知のとおり、スタンプ制度の基本的システムは、買い物をした際に受け取ったシールを台紙に貼り、これがいっぱいになると先程のポイントカードと同じように、さまざまな特典が受けられるというもの。
 スタンプ制度と前述のポイントカードを比較してみると…
@ スタンプシールは、台紙を持参しない客でもシールを渡せば済むが、ポイントカードの場合は、カードを忘れた客への対応を考えておく必要がある。
A 利用客にとっては、ポイントカードは、切ったり貼ったりする手間がない。
B ポイントカードに比べ、スタンプシールは、比較的経費をかけずに始めることができる。
C ポイントカードでは、顧客情報を管理するなどの多面的な利用が可能。
 このように、スタンプ制度、ポイントカードともにそれぞれ一長一短があるわけだが、各店の個性や方針に合わせて、どちらの方法を取るか検討する必要があるだろう。

「スタンプ事業」のパイオニア烏山駅前通り商店街の場合

 東京に、スタンプ事業でその名を全国に轟かせた商店街がある。
 その商店街は、「烏山駅前通り商店街振興組合」。いろいろな場面で紹介されているので、ご存知の方も多いことだろう。
 東京都世田谷区にある同組合は、昭和三一年に設立。新宿から電車で二〇分弱、区の北西に位置する。
 京王線千歳烏山駅を中心に、二百店の商店で構成する。四〇年、組合では、大型店の進出を契機にスタンプ事業を導入した。
 平成七年の決算では、スタンプの発行額が三億円の大台に達し、これを記念して謝恩セールも盛大に行われている。
 これだけ烏山のスタンプ事業が顧客に受け入れられたのには、幾つかの要因がある。
 その第一は、スタンプを集めることで受けられるサービス、即ちスタンプを集めることへの付加価値が多彩である点だ。
 烏山のスタンプは、 第二の通貨 として、台紙が満点になると、商店街で買い物ができる。また、付加価値の高いイベント事業への参加も、スタンプを集めなければ参加することができないシステムになっていて、スタンプを集めることの意味を明らかにして収集意欲を盛り上げている。
 そして二点目は、加盟店の品揃えや接客態度など、個店の姿勢の良さが上げられる。
 スタンプ事業に取り組めば、商店街が繁盛するという`迷信aを抱えたまま、本来取り組むべき個店の自助努力を怠っては、本末転倒であるということを烏山の事例は物語っている。
 組合が取り組んだスタンプ事業の成功は、個店の売上増を導いただけでなく、後継者も安心して店を継げる環境をも造りだした。
これは、個店の力と組織の力が見事に結集した結果ではないだろうか。

組合が連携して、ポイントカード事業を展開
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中小企業静岡(1998年 4月号 No.533)