2 広報誌作成の流れ

組合報をはじめとする広報誌を作成するためには、いくつかの段階を経る必要がある。
 ここでは、基本的な流れを紹介するが、編集担当者によっては、二つのステップをひとまとめにしたり、反対に細分化している場合があるかも知れない。
 いずれにしても、限られた時間で確実に処理しなければならない仕事だけに、「自分流」を確立してムダのない流れを作ることがポイントといえそうだ。

広報誌編集の”大方針”
 実際に広報誌を作成する前に重要なのは、その広報誌が誰に、何のために作成するかを明確にしておくことである。
 組合が作成する広報誌は、組合員に情報を提供するために作成することは当然だが、先に紹介した調査結果にもあるように、組合員以外の一般消費者や行政関係者などに、その組合や業界の状況を知ってもらうことを目的に広報誌を活用する場合もある。
 誰に対して、どのような目的で作成するかという大方針(編集の基本方針)が明確であれば、自ずと掲載すべき情報や誌面構成も固まり、広報誌の性格付けをすることができる。

「企画」を練るほどあとが楽! 
 編集の基本方針が固まれば、手始めにやらなければならないのが、「企画」。
 先の調査結果では、組合が発行する広報誌の半数以上が「四ページ以下」ということなので、的を絞った誌面が要求される。
 広報誌に限らず、定期的に発行する出版物の場合、情報コーナーや特集など、その目的別に誌面が分割されている。
 企画段階では、それぞれのコーナーの特性をふまえながら情報を集め、この情報を各コーナーごとに仕訳してどの程度のボリュームになるかを検討する。
 どのような情報を盛り込むかを検討するとき、「編集委員会」のような組織があればいいのだが、組合事務局が一手に編集作業を引き受けている状況では、これもなかなか難しい。
 詰まるところは、編集の基本方針に照らして、担当者がどのような情報を載せるかを判断するしかないが、こうした試行錯誤の繰り返しが、企画段階の重要な作業になる。
 また、ページ数が多い広報誌の場合は、一ページ目から最後のページまでを、コーナーの名称とそこに入れ込む“ネタ”の概要、取材先や取材日、原稿締切などをひとつの表にまとめた「ページ割表」を作ると便利。
 この表を作れば、コーナーごとにどの程度ページを割かなければならないか見当がつくし、原稿量の目安もつけやすい。また、実際に編集作業をする段階では、その進み具合を確認することもできるし、見開きのページなど、ページの割り振りを配慮しなければならないときに、この「ページ割表」はたいへん役立つ。
 いずれにしても、企画段階で、取り上げる情報や作業内容を十分検討しておけば、その後の作業ロスの防止にもつながるし、段取りよく編集を進めることができる。

■広報誌作成の基本的な流れ

第1段階「企画」
 1.各コーナーで取り上げる情報の収集整理
 2.編集作業の段取り・タイムスケジュールの検討
 3.ページ割表の作成

第2段階「取材」
 1.取材の準備(取材録の作成)
 2.取材の実施、情報の整理

第3段階「原稿作成」
 1.原稿字数の把握
 2.写真・表等、原稿を補足する掲載資料の整理
 3.原稿の作成・確認

第4段階「レイアウト」
 1.ラフスケッチの作成
 2.レイアウトの作成
 3.写真のトリミング

第5段階「入稿〜校正」
 1.印刷所へ材料引き渡し
 2.校正(原稿・レイアウト・色のチェック)

第6段階「印刷〜製本」
 1.印刷所から納品
 2.組合員等へ配布

「取材録」で頭の中を整理
 こうした作業が済むと、いよいよ取材を始めることになる。 取材内容が複雑な場合には、「取材録」を事前に作成しておくとよい。
 取材録では、誰に、何を、どのような順序で聞くかを整理し、必要があれば、写真を撮る場面にも“アタリ”をつけておく。
 取材録を作成しながら、手持ちの情報を整理すると、どこが情報不足かわかってくるし、うまくすれば、原稿の大ざっぱな筋道までつかむことができる。
 取材録には、編集者の頭の中を整理し、取材先から的確な情報を引き出すという効果があり、この点は注目に値する。

取材が済めば、「原稿作成」
 原稿を書く、という作業は、手慣れた編集者ならいざ知らず、本職、本業でない者にとっては、実に面倒で多くの時間を要する。
 本文だけでなく、インパクトのある見出しにも知恵を絞り、不適切な表現はないか、誤字や句読点などにも気を使って、ようやく原稿が完成する。
 勢いあまって字数超過。泣く泣く原稿の一部をカットということもあるが、前後のつながりが悪くなったり、一部を書き直すといったことにもなりかねない。原稿に取り組む前におおよその字数は把握しておきたい。

軽視できないレイアウトの出来・不出来
 手塩にかけた原稿を、どの場所に配置するかを考える。
 次に取りかかるのが「レイアウト」である。
 レイアウトが悪いと、せっかくの原稿も読みにくくなったり、目立たなかったりと、苦労が台無しになる可能性もある。
 写真も、本文の流れにあわせて配置しながら、写真全部を使うのか、一部を利用するかを決める(トリミングという)。
 見やすさを引き出すために、見出しや罫線、イラスト、文字の種類(明朝やゴシックなど)といった小道具も使う。

入稿から校正、そして製本
 印刷所に原稿やレイアウトを引き渡して(入稿)ほどなくすると、校正があがってくる。
 本文の校正は、普通二回程度。
 この二回の校正で、原稿(文字と内容)の最終チェックや、レイアウトが指定したとおりになっているかなどを確認する。
 色を使っている場合は、色校正もあわせて行う。また、汚れやゴミがないかもチェックする。
 校正は地味な作業だが、ここがゴールに到達する直前の大事な作業となる。
 細心の注意を払いながら校正が完了すると、印刷にまわり製本され、広報誌が完成する。

■組合が発行する広報誌−2
〜組合報だけでなく多彩な活動〜
誌  名
発行組合
発行回数
体  裁
発行部数
編集担当
 
主な内容






 

 
浜水協
浜松上下水道(協)
年2〜3回
A4版 8ページ
500部
情報委員会
(組合員から選出)
1.組合活動の紹介
2.特集
 組合の内部に情報委員会を設置し、組合員9人で編集を担当。情報委員会では、企画・立案から取材、見出し付け等を担当し、レイアウトは専門家が行う。
 このほか、200ページに及ぶ記念誌「水とあゆむ」の編集をこの委員会で手がけたほか、昨年11月には、市民に組合の存在を理解してもらおうと「組合パンフレット」を作成した。

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中小企業静岡(1998年 2月号 No.531)