3 印刷の主流「DTP」

情報の伝達手段は、コンピュータの発達によって、大きく変化し前進した。
 とりわけ印刷業界では、凸版印刷から、コンピュータを駆使した印刷へと技術が進歩している。
 これに伴って、必要なときに必要なだけ印刷する「オン・デマンド」という考え方も定着。 ユーザーから求められる、多品種少ロット生産に応えようと、複雑な印刷工程を簡素化する努力を積み重ねてきたわけだ。
 そして今、印刷の主流となっている「DTP(DeskTop Publishing)」。

 印刷の複雑な工程を、コンピュータの力を借りて“机上”で処理してしまうこのシステムとはどのようなものなのか。
 最後に、「DTP」の概要を紹介する。

一般的な印刷工程
 一般に、広報誌が完成するまでの印刷工程を、簡単ではあるが、以下のフローチャートにまとめてみた。
 まず、編集担当者から渡された原稿とレイアウトは、印刷所でその指定にあわせて、文字が組まれ、レイアウトにしたがって「版下」がつくられる。
 ここで、編集担当者の手元で第一回目の校正(初校という)が行われ、訂正があれば、再び印刷所で版下が手直しされる。
 こうして、版下が完成すると、版が集められ(集版)、版下をフィルムに焼き付けて原版をつくる(製版・フィルム出力)。
 この段階でもう一度、編集担当者が校正を行い(最終校正)、担当者からOKが出れば校正は終了(校了)。
 ここで初めて、実際の印刷に使用する版を、このフィルムをもとに作成し(刷版)、刷版を印刷機に取り付けて印刷が行われる。
 このように、基本的な流れだけでも、二度手間、三度手間をかけて、熟練した技術を駆使しながら印刷物を完成させるわけである。

■広報誌が完成するまでの流れ

「DTP」が工程を簡素化
 DTPとは、Desktop Publishingの略。つまり机のうえで出版するということである。
 上に示したフローにもあるとおり、DTPでは、原稿の引き渡し以降、刷版の手前まで、机上のパソコンで処理することになる。
 具体的に流れを見ると、まず原稿は、テキストという形式でデジタル化したデータにして、パソコンに入れ込む。
 そして、パソコン上でレイアウトを作成し、原稿をここに割り付ける。また、写真やイラストも、画像ソフトを使って、原稿と同じように割り付けていく。
 すでにこの段階で、版下・製版が完成したことになり、これを出力して、従来と同じように刷版の作成に移る。
 また、必要な時に必要なだけ印刷する「オン・デマンド印刷」は、製版や刷版の工程を経ることなく、パソコン上で版下・製版が完成したときに、そのデータをそのまま使い印刷する。これによって、経費も安く、短時間に印刷物ができあがるわけだ。

それでも「人」の力が“鍵”
 先ほど紹介したように、印刷には、熟達した技術が必要であり、それぞれの専門家が複雑な工程を完璧に仕上げることで、素晴らしい印刷物を世に送り出してきた。
 そして、今日のように、コンピュータのめざましい発展によって、極端にいえば、マウス操作ひとつで、印刷工程の最も複雑な部分の大半を処理することが可能になった。
 DTPは、印刷工程の省力化に大きく貢献するとともに、確実に印刷物の可能性(表現力)を広げた。
 しかし、印刷物のよし悪しは、「人」が“鍵”を握っていることにかわりない。
 優れた印刷物を生み出すには、「人」である編集担当者が立案する企画や、これを具現化する印刷業者の技術力やセンスがあいかわらず求められる。そして、関わる「人」全ての熱意が大切な要素となることはいうまでもない。
 限られた予算や時間の中で生み出される広報誌は、これに関わる人々の「伝えたい」という熱意と不断の努力に支えられている。

■組合が発行する広報誌−3
〜表紙に富士山を掲げ、地域性をアピール〜
誌  名
発行組合
 
発行回数
体  裁
発行部数
編集担当
 
主な内容


 




 

麗 峰
東芝富士工場
協力業者(協)
年2回
A4版15ページ
200部
広報委員会
(組合員から選出)
1.組合活動の紹介
2.寄稿記事
3.インタビューコーナー
 15年の歴史を持つ「麗峰」は、組合役員から選出された2人が編集を担当。発行日の2カ月前から企画に入り、テーマに沿った内容で取材をこなす。また、組合内の各専門委員会や関連企業の担当セクション等からの寄稿で、誌面の充実を図る。表紙には、広報委員等が撮影した富士市の各所から見る富士山の写真を掲載し、地域性を醸し出している。
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中小企業静岡(1998年 2月号 No.531)