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「商店街を取り囲む三つの敵」
 
商店街が“消店街”とならないために…

野口冬樹事務所
中小企業診断士 野 口 冬 樹

 商店街は本来地域における「コミュニティの担い手」であり、都市インフラのひとつとされてきた。
 しかし、その商店街のほとんどが、停滞ないしは衰退している。
 その要因は、消費者の所得水準の向上による価値観の変化、モータリゼーションの進展などを背景とした消費者行動の変化によるものである。
 その変化した消費者行動には――
 ■ドライになった買物行動
 ■買物がレジャーの一環
 ■週末のまとめ買い
 ■行動の広域化
 ■便宜性志向の強まり
 ■夜間の消費需要の増大
などがあげられる。
 商店街の停滞・衰退は、これら消費者行動の変化に十分対応できないのが主な要因である。
 従来は、地域の中心商店街は立地上優位とみられていたが、繁華街に立地していたことが、逆に「駐車場不足」「車での交通アクセスの悪さ」などを顕在化させた。
 このことが県下各地において、中心繁華街から相次ぐ大型店の撤退の要因のひとつとなっている。
 中小企業庁「小売業経営戦略調査」によれば、「商店街の直面する問題点」として――
近隣大型店に客足をとられる56%)
駐車場不足(53%)
経営者層の高齢化(46%)
商店街のまとまりのなさ(45%)
空き店舖の存在(44%)
個店老朽化(38%)
周辺都市等への顧客の流出(37%)
などがあげられている(複数回答)。
 消費購買力の域外・大型店・郊外店への流出により個店販売額が低下し、廃業店舖・商店街の歯抜け現象の発生、ひいては魅力ある業態の不足・商業集積の崩壊に繋がり、その結果、消費購買力の域外・大型店・郊外店への流出がすすみ、来街者・来店者が減少するという悪循環を生んでいる。
 この悪循環を断ち切るには、商業集積の環境整備・商店街構成店舗の個性・異質性の創出による利便性・快適性のある魅力ある街づくり以外にない。
 いずれにしても、商店街が「消店街」とならないためには、三つの敵を克服しなければならない。「三つの敵」とは何か――
 第一は、競合商店街・大型店・郊外店などの競合する商業集積という「外なる敵」である。
 第二は、商店街の構成員という「内なる敵」である。
 商店街は経営者の自発的な共同意識で本来成り立つものであるが必ずしもうまくいかない。総論は合意形成されても、各論になると仲間内の妬みやエゴが生まれて合意が崩れる。
 商業者の経営意識・事業観・経営意欲・財政状態など余りにも差異が大きく、その合意形成は、容易でないのが現実である。
 第三は、商店経営家族内の「内の内なる敵」である。とりわけ事業主の配偶者の同意が街づくりでは、不可欠である。
 それは商店経営において、商店婦人の役割、ウエイトが極めて高いことによるものである。
 街づくりには、商店街組織の中に「おかみさん会」などを設置して婦人の啓発・啓蒙から始めて、女性の感性・感受性をいかに街づくりに生かし得るかが成否のカギとなろう。


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 中小企業静岡(1997年06月号 No.523)