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特集

組合による
「地域ブランド」(地域団体商標)活用のすすめ

地域団体商標制度のメリットとデメリット

全国的な知名度を得る前でも商標登録できる

地域団体商標制度の創設理由でもあるが、商標取得までにブランドが無断使用され、ポリューション(汚染)されたり、ダイリューション(希薄化)されることを防ぐことができる。

地域の将来を語る場が生まれる

どのようなコンセプトで商品やサービスを構築するかについて、地域の未来を含めて、組合設立までに十分に議論する時間をもたなければならない。時間を持つことがメリットと考えられない組合は、地域団体商標を取得する必要はない、とも言える。

その地域が地域ブランド構築のために地域団体商標の出願を契機に話し合いの場をもつことは大きなメリットである。

商標登録には事務処理や経費などのコストが発生する

商標取得は容易ではない。商標の周知性を立証するための証拠集めや出願書類の代理人への依頼、特許庁に出願費用や「年金」を支払う必要も生じる。商標を更新する場合は、10年おきに「年金」を支払う必要が生じるため、積み立てなどの運用も必要となる。

地域との関係に厳しく縛られる

商品が大量に売れるようになると、他の地域でも生産して規模の拡大を図りたくなるものだが、地域団体商標の要件に反することとなりジレンマに陥る。また、工程の一部を海外の安い人件費に委ねたくなることもある。このため、地域名を冠しない通常の商標取得で、地域ブランドを起したほうが妥当な場合もあり得る。

長期的な視点では産地が移動する可能性がある

ブランド構築には30年くらいかかるといわれるが、近年の温暖化などにより、農林水産物の生産地や水揚げ地が北に移動する傾向がある。そこで、「地域」で限定するのが得策か、他の名前を使用するのが得策かを十分に精査することも必要だ。

地域団体商標登録のポイント

昨年度、本会が組合等を対象に実施した『地域ブランドの戦略的活用に関する意向調査』(以下、「意向調査」)の結果をみると、“地域団体商標の登録出願に対する課題”として、「登録後の活用方法」が最も多く、次いで「該当商品等の研究開発」、「出願手続き」、「出願条件の取りまとめ・調整」の順であった(図表3)。

また、“行政・自治体・支援機関等へ対する要望事項”としては、「情報提供」が最も多く、次いで「出願協力」、「販売支援」、「金銭面の支援」の順であった(図表4)。

以上のように組合の抱える課題や要望事項は多岐にわたるが、「出願時」には商品開発や情報提供、出願手続き、登録費用などが、「登録後」には登録後の活用方法や販売などが多い。さらに、地域団体商標制度の登録出願に関係する部分と、商品開発や販売支援など制度以外の部分とに分けられる。

図表3 地域団体商標の登録出願に対する課題(複数回答)

図表4 行政・自治体・支援機関等への要望(複数回答)

商品の開発

「意向調査」によると、「組合ならではの商品(製品)・技術・サービスの有無」に対しては、「ある」が46.4%、「ない」が47.8%という回答であった。

このように、「当地には特別な特産品や物産品がない」と考える地域も多いことから、地域団体商標制度普及の前提として、商標登録商品となる商品開発に取り組むことが求められよう。

ただし、何もないところから、商品の開発をすることは困難な作業である。まずは、顕在化はしていないが、地域に眠る貴重な地域資源を掘り起こしていく作業が必要だ。

「意向調査」では、「申請準備・検討中」は12品目、「組合ならではの地域特産品・物産品」は51品目あるとの回答が寄せられた。さらに、県内には、伝統的工芸品(経済産業大臣指定)が3品目、郷土工芸品(静岡県知事指定)が19品目、地域産業資源(静岡県)が186品目もあることなどから、各地域には多くの貴重な資源が眠っていると言える。

ただし当事者だけで地域資源の掘り起こしを図ろうとしても、普段見慣れていることなどから、なかなか気づかないことも多い。このため、組合だけに任せるのではなく、行政や地域住民(実需者)地域外の第三者を交えて、掘り起こし作業を行うのが効果的である。

また、地域資源の発掘や既に組合ならではの商品・サービスが存在する場合でも、そのまま直ぐに、地域特産品になるわけではない。このため、ありふれたようなモノでも、ターゲット(顧客層)や用途を変える、加工する、他の資源と組み合わせるなど、視点を変えることで、新しい商品・サービスに生まれ変わることもある。

加えて、異業種異業態の組合や産学官との連携を図ることで、新しいアイデアが生まれることも多い。連携に積極的に取り組むことも必要だ。

出願目的の設定

地域団体商標の登録には、「地域ブランドをより適切に保護することにより、事業者の信用の維持を図り、産業競争力の強化と地域経済の活性化を支援する」という制度の目的や商品面、販売面の強化に加え、組織化・内部統率力の向上・人材育成など「組織力の強化」にも効果がある。

その取り組み効果として、商品PRや知名度向上、売上増大を期待する組合が多いことから、行政や支援機関など第3者が、現状の組合の商品力・販売力・組織力を客観的に評価した上で、将来のあるべき姿を見据え、“出願目的”を設定する必要がある(図表5)。

図表5 地域団体商標制度の効果