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ビジネスレポート

「いざなぎ超えも小売額増大ならず」
事務局代表者会議で藻谷氏講演

静岡県中央会・県職員協会

藻谷氏の熱弁に耳を傾ける出席者ら。

中央会主催による事務局代表者会議が昨年10月15日、静岡市のホテルプリヴェ静岡ステーションで開催された。組合職員など、およそ100人が出席した。
あいさつに立った中央会の山口正藏専務理事は、「時代の変革期にあって、組合は組合員のニーズに沿った事業再構築を急がなければならない。経営革新や新連携事業など、組合の組織力を内外に発揮することで、新たな事業展開も見えてくるはず。
その意味で、今ほど事務局の力量が組合運営を左右する時はない。こうした機会を通じて、相互に研鑽を積んでほしい」と述べた。
講演会では、日本政策投資銀行地域企画部の藻谷浩介参事役が「実測!静岡県経済。〜人口減少社会における中小企業の活路〜」をテーマに熱弁をふるった。
藻谷氏は、内閣府や財務省、経済産業省などの委員を多数務め、年間講演数は433回を数える新進気鋭のエコノミスト。国勢調査や商業統計などの数値を駆使し、静岡市や浜松市など県内商業の現状を分析した。
氏は「商業床面積が増加しているのに、販売額は減っている。にもかかわらず、大規模開発でさらに商業床は増え続けている」と指摘。その結果、過当競争で値崩れが起きる悪循環が生じていると説明した。
こうした点を踏まえ、「地域の商業者は、国の規制によってではなく、市の都市計画で商業床に総量規制をかけるなどの運動が必要」と提言。加えて、「通販への取組みや地域消費者にターゲットを絞るなどして、大型店と競合しないニッチ市場を抱え込む自助努力が必要」と説いた。

講演要旨

静岡市の小売業の数値を見ると、店舗面積は増えつづけている。例えば、平成3年度の67.3万m²から16年度は83.8万m²と124%の増床である。これに対し、小売販売額は減少している。平成3年度8,906億円だった売上高は16年度には8,023億円と1割近く減少した。こうした動きは、首都圏も同じで、浜松や名古屋も大同小異である。
では、なぜ小売販売額が減少しているのか。長期不況によるデフレが原因とする意見があるが、そうではない。
一つは、地域の所得に関係なく過剰な出店(商業床面積の増大)をしたため、値崩れが起きていること。
また、平成8年を境に新卒就職者数よりも退職者数が多くなったために、消費者の所得が落ち始めているのも大きな原因だ。
こうした就業者数の減少は、機械化や情報化への投資を促進させ結果的に企業収益は向上し、数字上の景気はよくなる。景気は「いざなぎを超えた」といわれるが、小売額の増大には決してつながらない。
では、どうしたらよいか。今後、郊外の過剰店舗は整理されていき、人口密集地の商業が生き残る格好になるだろうが、地元が結束して市の都市計画で商業床に総量規制をかけるのも一手。個店としては、大型店と競合しないニッチ市場を抱え込むことが必要だ。

「デフレ克服で販売回復」は過ち

「なぜ小売販売額が増えないのか? デフレ説は過ちで、過剰な出店で値崩れが起きたこと、就業者数の減少で消費者の所得が落ち始めている、などが原因だ」

日本政策投資銀行
地域企画部 藻谷 浩介氏