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 編集室だより 



指導員の現場から
IT化、どんなに進んでも
基本は人間関係




事務所の雰囲気も変化

 昨年末、人事院がパソコンなどIT機器を扱う公務員の職場環境、健康管理に関する指針をまとめた。
 指針では「連続しての操作は一時間以内、次の操作までに一〇分から一五分間空ける」など、留意事項を細かく定めている。ディスプレイを長時間、休みなく見ていると、目の疲れから頭痛や吐き気などの「VDT症候群」を発症することも報告されている。
 事務作業のスピードを劇的に変えたIT機器、日々の業務に無くてはならない存在となっている。
 さらに、IT機器の浸透が職場の雰囲気も大きく変えた。本会でも、一昔前なら組合さんからの相談事も同僚・先輩と議論を交わし、お答えすることが日常の姿だった。職員同士の会話を通して、会員組合さんの悩みや課題を有する仕組みができていた。
 しかし、最近の事務所の中は、職員のほぼ全員にパソコンが行渡り、ディスプレイに向かい、寡黙に仕事をする光景が目に付く。
 インターネットやメールで、情報収集の幅は飛躍的に広がった。機械には都合がないから、調べたい事を入力すれば、即座に返事が返ってくる。
 現在、各組合さんの情報状況については、情報交換の場が設定され、必要な事項が職員に伝達される。
 しかし、身近に座り、生きた情報を持つ仲間。貴重な情報源との会話の機会が、減っているように感じられて仕方がない。

道具として使いこなす

 IT化の波は、これまでは考えられなかった様々なシミュレーションや、複雑な事務処理を可能にした。仕事の幅は大きく広がり、誰もが、膨大な情報の中から必要な情報を入手することができる。
 しかし、IT機器の導入が、大きな成果を上げる中、現在の事務所の雰囲気や状況を危惧する声もある。
 過去のデータの活用が容易な為、陥り易いマンネリ化。人と人との交流の機会の減少などを指摘する。
 特に、IT化によって減らすことができるといわれる「人間関係の煩わしさ」に対する認識の変化を心配する。
 「煩わしさ」を通してしか、生まれない人間同士の信頼関係の大切さだ。
 中央会の今年度重点事業の一つに、これまでやっていなかったのかと、お叱りを受けても仕方のない全会員組合の巡回がある。最低でも、年に一回以上すべての会員組合さんを巡回、組合の運営状況や業界の景況を聞くことにしている。
 中小企業や組合の運営に日々携わる経営者に直接会って話を聞く。
 IT機器を活用して得る情報も大切だが、直接経営者に会い「生の声」を聞き一緒に考える。これこそ我々が、日頃、仕事を進める上で、失ってはいけない基本的な姿勢ではないか。
 しかし、人に会う前提として、基礎的な状況・情報を充分に把握する必要がある。そのために、IT機器は十分に使いこなせば、すばらしい武器となる。(府)


中小企業静岡(2003年 2月号 No.591)