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寒さに負けない協同組合

 いつ果てるともしれない長い不況。そして、郊外への大型店の進出などによって、全国のどこの中小都市にもみられる“シャッター商店街”と揶揄されるお店の撤退、減少、衰退には、眼を覆いたくなるほどである。
 しかし、どっこい協同の力と智慧を結集し、この難局に挑戦している事例も数多くある。零下二十度にもなる北の国、北海道は帯広駅の近くの「北の起業広場協同組合」も、そのひとつである。
 この組合は、屋台店十八店が協同組合を結成し、営業の許可を得る障害となっていた、トイレを組合の共同施設として建設し、解決した。
 この共同トイレの実現には、協同組合という公益性を持つ性格上から国や市の補助金など行政の支援を受け、いまや話題のスポットとして、町のにぎわいに一役かっているという。オープンして一年半、月の売上が千八百万円というから、一店当り百万円の実績をあげている勘定となり、この業種としては立派な成績である。
 いまわが国の大方針は何もかもが“改革”にしぼられ、大きいこと、強いこと、技術革新などで、中小企業にはベンチャーや差別化が強く求められている。もちろん、私としてもグローバル化した今日の経済社会にとって、必然のあり方として異論はない。
 しかし、現実の経済実態からみると、屋台店のようにITとか、高度技術とは無縁の、しかも大多数の中小零細企業の存在を抜きにして、消費の増大や雇用の確保は望むべくもないことは誰でもわかる。そうした意味で、規模的にはごくささやかではあるが、屋台店共同化の試みと成功は、大いに注目し、高く評価されるべきものがある。
 私たちは、従来の固定観念にとらわれない、新たな共同化について、お互いに徹底して智慧を出し合い、時代にあった組合の活用に挑戦していく二〇〇三年にしたいと念じている。

静岡県中小企業団体中央会・会長 


中小企業静岡(2003年 2月号 No.591)