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海外ルポ「現代中国見聞録」



自転車はナゼ無灯なのか?

 二十四年前に訪中した時も、道路いっぱい無秩序にはしる雲霞のごとき自転車には閉口したが、現在でも市民の足は自転車といっていい。その自転車がすべて無灯車なのには誰もが驚かされる。
 前回の時は、もしソ連(旧)が突然に攻め込んできた時、夜戦用に日頃から訓練しているのだ、といううがった解説もあったが…今回も「中国人は目がいいから無灯でも大丈夫」「いや目を良くする訓練のため」など同行者たちの勝手な憶測もあった。その実態は、無灯が原因の交通事故が多発しているので、電池をつけたいのはやまやまだが、付けてもすぐに盗られてしまうので付けない―のが本音のようだ。しかし政府も急増する交通事故対策のため無灯を禁ずる方針とかで、次に訪中した時には、無灯自転車はなくなっている可能性が強い。

マンション階段の電気は手動です

 杭州で高級の部類にはいるマンションを訪ねた。そのお宅は七階建ての五階にあったが、先導した知人の中国人は、階段を上るたびにスイッチを入れ電気をつける。それが階段を登ると間もなく自動的に消えるシステムになっている。
 現在この国では七階建てまでにはエレベーターはなく、こうした節電システムが義務づけられ、夜は地域全体が日本に比べ極端に暗い。これもエネルギー節減のためではあろうが、結果的には地球温暖化の元凶、CO2対策に貢献(?)しているから皮肉といえば皮肉でもある。
 そうした視点からみると、不必要と思えるほどキンキラキンで、エネルギーを浪費しているわが日本も、やがて夜間照明など見直しを迫られる日のくることを予感した。

ゼロエミッションの普及は

 なにしろ日本とちがい土地は無制限にあるので、工場団地のインフラや立地はすばらしいの一語につきる。私は立派な工業団地で執拗に産業廃棄物について質問してみた。通訳付きなので即断はできないが、廃棄物の処理は埋め立てが主流で一部焼却もあるようだ。
 土地は国有なので、日本では立地が至難で貌大なコストのかかる処分場について住民の反対もなく出来ると思われる。
 人件費コストの安さと相まって、環境対応費用が少ないのも、国際競争力の面でも、かなりの役割を果たしているのではないかと、うがった見方もしたくなるが、四国の豊島や、東北での不法投棄のような環境負荷のツケを将来に残さない―とは断言できない感じを受けた。

受身から積極攻勢への転換を

 日本企業の多くは、人件費格差から生ずる競争力への対応策として、中国へ生産拠点を移し、ユニクロや農産物に代表される輸入商品の、大きな波にさらされるなど、受身の被害者的意識が強い。
 しかし、今回浜松の繊維産業は「量産品は中国だが、風合いや微妙な色彩の高級品は浜松で」を合言葉にして、上海にショールームを進出させた。その成果は未知数だが受身から攻めの布石として、大いに注目される。
 また中国では、これから十年間に百uで計算し、実に一億戸の住宅が建てられる計画であり、今後は内装材も含め木材の需要増大は必至である。本県にとっても何かの仕掛けが欲しいところだ。この国の民度向上により伊豆地区への観光客の受入れも視野に入ってくるのであろう。
 今回のチャーター機は、上海、名古屋間を一時間五十分で飛んだ。「一億人の市場・上海は日帰りの距離」にあることを改めて実感した旅だった。


中小企業静岡(2003年 2月号 No.591)