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海外ルポ



ひまわりの向こうにブルーの地中海

 ソレントからさらに南下して行くと、地図の上でいえば足の“くるぶし”に当たるところに『アルべロベッロ』という奇妙な名前の町がある。ここのホテルには、シャワーしかないことでもわかるような小さな田舎町ではあるが、まるごとオトギの国のようで、地元で産出される薄い石材を積み重ねたトンガリ帽子のような家々が軒を接し集落をなしていた。
 ローマとも、ナポリとも全く異質で、あえていえば登呂遺跡に似たイメージで、町の周囲はオリーブやひまわり畑に囲まれている牧歌的な風景であった。かつて中学校の授業で習った都市毎に独立したポリス国家の名残かな、と思いながら車窓をみているとなだらかな丘の上に、それはそれは巨大な風力発電が何十機も、幾何学的に並んでおり、無限に広がる一幅の絵にも見えた。ブルーの美しい海をもつこの国でも地球環境のために力を注いでいることを確認でき、環境保全に関りの仕事をしている筆者としてはうれしい限りだった。

経営者よ 旅に出よう

 世界中が、もちろん日本国民全体も熱病にうなされたかのような、あのワールドカップの余熱がまださめやらぬ七月八日。私は地中海の楽園であると同時にマフィアの巣窟ともいわれるシチリア島をサッカーボールに例えるなら、まさにシュート寸前のイタリア半島の先端の爪先にあたるレッジョ・デ・カラブリアの街にいた。
 サッカーファンならずとも知られた横浜Fマリノスの中村俊輔選手は、十分な実力があると衆目が認めていたのに、日本の代表選手から外され、判官びいきもあって、逆に国の内外での評価が高まる一方だった。
 早速、中村に目をつけたが、この都市をホームとするセリエAのレッジーナで、ちょうどこの日に移籍が正式発表され、イタリアの中央紙も大々的に報じていた。
 カラブリアは人口十七万人ほどの小都市で、日本のイメージでいえば地勢的にもこの国の最南端に位置し、港もあり鹿児島といった感じの街で、サッカーには目がないこの国では既に中村はスター扱いのようだった。
 観光バスのドライバーも、こちらが日本人と知っているので持前のサービス精神がさらに高まっている。曰く『イタリアは韓国に対しサッカーでは勝ったが勝負に負けたのは審判のためだ』と大声を出していた。こちらも『私も同感だし、日本人もそう思っていますヨ』と、ガイドを通じて応酬したので意気投合し、大いに盛り上がった。
 この時、なぜか突然に”三国同盟“のことが私の頭をよぎった。先の大戦で日本はドイツとイタリアと組んで三国同盟(一九四〇年)を結成。当時、子供たちは何かに付けて三人で手や肩を組んで同志であることを誇示したものだった。
 この事例はあまり適当ではないが、このように旅に出ると突発的に非日常的な思考や行動が飛び出したり、出くわすことが多い。
 そうした意味で変化の激しい時代だからこそ、積極的に外に出て専門外のことにふれ、異質な刺激を受ける機会を多くつくることは“経営者にとって大切なことだナ”との思いを記して筆をおくこととする。


中小企業静岡(2002年 10月号 No.587)