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海外ルポ

『イタリア 見たまま、
感じたまま』


水上 一夫

(静岡県中小企業団体中央会 参与)

▲『アルベロベッロ』の町にたたずむ筆者



南と北に格差あり

 この国の南北格差は大きい。ローマを基点にして北側にあたる地域は、世界のファッション界をリードするミラノをはじめべネツィア、フィレンツェ、ボローニャなど、いわゆる陽のあたる場所が目白押しである。
 今回私はローマから南に足を伸ばしてみた。高速道路を数時間でナポリへ。ここは言わずと知れた世界三大美港を抱く風光明媚な地で、旧市街がそっくり“世界遺産”に指定され、この街がかつていかに栄えたかがうかがえる。
 一方で車窓から見ただけの旅人の目にも貧富の差が大きなことは一目瞭然だ。
 そんな旧いナポリだが、一九九五年に世界の建築家によるコンペを制した、丹下健三氏による“ナポリ新都心計画”は途方もなく大規模で人と車を完全に分離し、緑を軸とした行政、ビジネスの中心街を構成している。世界に知られた歴史の街に、丹下氏によってつくられた新都心は、日本とその文化への評価に大きな役割を果たした快挙といえる。
 ナポリから指呼の間にソレントがある(もっともその中間にかのベスビオス火山とポンペイの遺跡がある)。海に面したソレント最大の売りものは、カリブ海に浮かぶカプリ島にある幻想的なエメラルドグリーン色で有名な“青の洞窟”など見どころがいっぱいの景勝地であるとともに、高級別荘地でもある。
 しかし“サンタ・ルチア”や“帰れソレント”など日本にも良く知られた歌は、貧しいがために出稼ぎのため、海外に出た人々がふるさとの地を偲んだ歌でこの地方の経済状況はいまも悪い。資料によれば失業率は十〜十五%。特に南部地域では日本の三倍ほどの失業率で、街路の清掃にたずさわる人が多く目に付くので、聞いてみたらゴミのポイ捨ても『あの人たちの職場を奪わないためだ―』と真顔で答えられたのには驚いた。日本で今様に格好よくいえば広義のワークシェアリングかな、とも思った。


中小企業静岡(2002年 10月号 No.587)