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指導員の現場から
女房たちの創業



 今年の夏は、連日畑仕事に励んでいた。
 私の住んでいる静岡市谷田は日本平の麓にあり、昔は広大な茶畑が広がっていた。しかし、県立美術館、県立大学ができて以来、バブルがはじけた現在も住宅建設が進み、農家の働き手も減り、休耕畑が増え続けている。
 そこで、私も近所の農家から十坪ばかりの畑を借りたという次第である。
 女房と二人で畑を耕し、生ゴミから作った肥料をやる。種蒔き、または苗を植える。毎日水をやり、雑草を取る。
 なかなか大変な作業だが、肉体的にはともかく精神的には充実して楽しい。
 初夏に植えた茄子、きゅうり、枝豆、トウモロコシ、そしてトマト。それが食卓に上ると、なお更である。
 自分で作るものだから、当然、無農薬有機栽培。
 ある日曜日、早朝から女房とその友人数人が居間で味噌作りを始めた。居間と台所はあっという間に戦場と化した。
 あらかじめ麹屋に頼んでおいた麹に塩を混ぜる。鍋で大豆を茹でる。茹であがった大豆をミンチでつぶし、それに麹を混ぜ、団子状にして空気を抜くために瓶に投げつけ押しつぶす。表面を平にして再度塩を振りかけてカビを防ぐ。半年寝かせて出来上がり。味噌作りは丸一日掛かって終了した。
 この女房連中は、全員専業主婦で、今日のように味噌作りをしてみたり、パンを焼いてみたりして暇をつぶしている。そして全員が自然食信奉者というわけだ。
 片付けが終わって、お茶を飲みながらダベっている女房連中の輪の中に私も参加した。
 最近の日本経済は、消費者のニーズが多様化し、価格競争も激しくなっていること。情報化、国際化が進んでいる中、廃業率が開業率を上回る現象が起こっていること。そのために経済の新陳代謝が行われなくなり、活力の低下が心配されること。新たな創業を考えている人や創業後間もない中小企業者が円滑に創業または事業活動を行うことができるように、国などが支援してくれること。その内容は、企業の発展段階に応じて資金、人材、経営ノウハウ、情報、技術などであることを説明した。
 また、主婦たちが地元のヘチマ水を原料にして化粧品開発と販売をしている事例。障害者と健常者たちが協力して手作りパンや地元で仕入れた米や卵などの自然食品を消費者に配達販売をしている事例。主婦たちがクッキーやパンの製造販売を行い、将来的には知的障害を持つ子供たちの職業の場としての役割を担う目
的で活躍している事例等を、私は思わず熱く語ってしまった。
 当然のように、彼女たちの目は一様に輝いた。
 その日以後、何回か創業についての会合が開かれ、私もその会合に参加した。
 実現するにはまだまだクリアしなければならない課題が山積しているようだが、確かに、彼女たちは夢を抱いたようだ。(良)


中小企業静岡(2002年 10月号 No.587)