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浜松事務所発

「生ごみ再生」の義務付けに向け



関連業種で組織化の動きも

食品廃棄物リサイクル法 成立

 小学五年生の時。担任の大畑先生はボクらにこう言った。
 「私は、終戦直後の貧しい時代に成長期をすごした。腹いっぱい食べれる頃にはもう身長は止まっていて、後は食べても食べても横にしか伸びなかったよ」。彼はおどけながら、突き出た腹をポンとたたいてみせた。
 戦後五五年。食への欲求は衰えることを知らず、今や贅沢の極みを尽くした感がある。そして「食品廃棄物リサイクル法」なる法律が本年五月三〇日に成立。これにより食品メーカー、ホテル、外食産業、スーパー等から排出される生ごみや残飯などの食品廃棄物を堆肥や飼料へのリサイクルが義務付けられた。五年間で再資源化率を二〇%に押し上げようという案が有力で、今後、ほとんどの事業所がこの対応に迫られることになる。
 既に全国レベルでは堆肥や飼料化センター(中間処理施設)の設立事例が出始めているが、本県西部地区でも排出事業所を軸とした関連業界に慌しい動きが出ており、浜松事務所にもリサイクル施設の建設に関する相談がいくつか寄せられている。

販路確保が最大のネックに

 排出事業所とすれば新法への対応は切実である。一方、廃棄物回収業や農業、プラントメーカー等にとっても新たなビジネスチャンスが到来したといえる。しかしながら、計画の遂行に向けては、数々のハードルが待ち受けていることも強調したい。 
 一つは許可の問題である。
「堆肥の原料となるのは食品廃棄物や造園業による剪定枝・草等。前者は事業用一般廃棄物で後者は産業廃棄物となるため、リサイクル施設の計画によっては一廃・産廃の『施設許可』と一廃・産廃の『営業許可』が必要」と浜松市の担当者は指摘する。さらに周辺住民の同意は取れたとして、最大の問題はなんと言っても再生堆肥の販路である。
 磐田市の農業Aさんは「化学肥料と比べ土に優しく作物の育ちや味も好評」と高い評価をし、自身が再生堆肥の製造に乗り出した。しかし、彼のような積極派は、農家の間ではまだほんのひと握りに過ぎない。再生堆肥は、性格上、季節により組成が異なる点や前処理や成熟期間による品質のバラツキ等の課題が常につきまとう。その結果、農家にとって、年間を通じた安定供給が受けられるのか、作物の安定した生産量・品質が得られるのか、といった疑問があれば躊躇するのは当然といえる。
 とはいえ、再生堆肥への取り組みはこれからが本番である。今後、ニーズにマッチした商品化へ向け、様々な調査研究が進むはずである。中央会職員の一人としても、時代の要請に即応すべく、こうしたシーズを掘り起こし、支援する姿勢を忘れてはならないと思う。
 しかしcc飽食の時代、これが永久に続くわけではあるまい。天災、人災に端を発する飢えの循環はいつ我国を襲うか分からない。その時、どうする。こちらも気がかりではある。(矢部)


中小企業静岡(2000年 11月号 No.564)