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指導員特別寄稿

■利益の内部留保に努める本組合とは

 昭和六一年気心の知れた運送業者七人で静岡県中部トラック運送協同組合を設立した。
 当初の目的は、共同施設の取得を伴う共同給油事業と共同保管事業であったが、用地取得の最終段階で暗礁に乗り上げ、設立一年目にして解散の声が聞こえるほど深刻な事態に直面した。
 望月理事長は、組合解散を覚悟して組合員を招集。協議の結果、「新たな候補地が見つかるまで事業方針を変更してでも存続しよう」という組合員の熱意に押され、軽油、オイル、タイヤ等の購入斡旋事業を事業の柱に再スタートを切ることになった。
 事業規模はさほど大きくないものの、組合員の利用は徐々に増加していった。

■加算式持分算定方法の採用

 平成五年、本誌に「加算式持分の払戻し」に関する模範定款例が掲載された。
 加算式持分算定方法とは、増加した正味財産を期末在籍組合員で毎期配分する方法である。法定利益準備金、特別積立金については、組合員の共同事業の利用状況を加味して持分を配分できるので差等式ともいう。組合員の貢献度が、持分配分に考慮されるので公平な側面を持っている。
 また、持分が毎期末に配分されるので新規組合員から高額な加入金を徴収しなくて済む。高額な加入金の負担がないから新規組合員のスムースな加入が見込まれる。
 その反面、毎事業年度末に組合員ごとの持分計算を行なうことになり、事務の煩雑は避けられないこともあってか、“加算式算定法“を採用した組合は聞かない。
 ところが、望月理事長はこの方法に着眼した。
 理事長の脳裏に「多くの組合が採用している改算式(均等式)の出資額限度の持分払戻方法では、共同事業を利用しなくても、出資金を多く持ち、最後まで組合に残った者が得をする。だから休眠組合員が増え、組合活動がこれら組合員によって足を引っ張られる。」との持論があったからである。
 その後も組合は、加算式算定法に関する議論を重ねた。特に問題となったのは、事業利用分量の基準で配分できる法定利益準備金と特別積立金である。
 利益配分の元になる当期利益は、事業収入と事業外収入(平等割賦課金等)で構成されているから、事業利用分量で全て配分すると逆に利用者有利になるとの意見であった。その対応策が「組合総収入に占める事業収入割合の算出であった。この割合を当期利益に乗じた額を限度額として法定利益準備金と特別積立金に区分し、利用状況に応じて配分する。」こととなった。
 平成六年五月の通常総会で持分払戻方法について定款変更が承認された。
 その後、開催される通常総会では、常に全組合員が出席、組合員の目は、一般の議題より一年間の増加持分や過去の持分累計累額に釘付けとなっている。

・持分算定方法の比較(PDF形式708KB)



中小企業静岡(2005年9月号No.622)