「トレーサビリティ」。あまり聞きなれない言葉だが、今、食品関連業界にとっては重要なキーワードとなっている。英語の「トレース」(足跡を追う)と「アビリティ」(できること)を合わせた言葉で、「トレーサビリティ」。直訳すると追跡可能性となる。
スーパー等に並んでいる食品がいつ、どこで、どのように生産・流通されたかを消費者がいつでも把握できること。すなわち最終商品から原材料へと生産履歴を追跡できることである。
食品の安全性が問われてから久しい。O157、ダイオキシン、残留農薬、BSE問題、偽装表示と事件・事故が相次いだ。生産者の顔の見える食品が売れている所以である。消費者は「安心」して食品を購入できることを望んでいる。
このことから考えると「本物」を使い、「本物」をつくることが何をおいても必要かつ大切なことに思える。これは農林水産業だけでなく、工業やサービス業にも当てはまるのではなかろうか。
近い将来、工業や商業、サービス業にもこの「トレーサビリティ」のシステムが導入されるかもしれない。
消費者はすべての商品、製品に「安全」と「安心」を求めている。本物をつくれば売れる時代に戻った。
「地産地消」。これも食品関連業界の言葉である。この言葉も業界にとっては今後の重要なキーワードとなる。地元でとれたものを地元で消費すること。地元の消費者が生産者の顔の見えるなかで消費する。素晴らしい提案であると思う。
この地産地消の考え方も農業や水産業だけでなく、工業や商業、サービス業にもあい通ずる。地元でとれた木材を加工して地元で消費する。地元でつくった工業製品を地元の人が買って使う。今までなかなかできなかった事ではある。
「地域・地方の時代」と言われているが、地域・地方を育てるのは地域の人々でなくてはならない。その意味からもせめて、その地域でつくったもの、とれたものは地域で使用し、消費することが事の「はじめ」ではないだろうか。地域の時代だからこそ「地産地消」という言葉が生まれたのであろう。大いに地元に情報を発信しよう。
もう一つ「スローフード」という言葉もある。「ファーストフード」の反対語である。
ファーストフードは便利で早くて、いつでも安く、手軽に食事ができること。スローフードは、家庭でつくったもの(味)を家族団欒の中で時間をかけてゆっくり味をかみしめながら食事をすること。どちらが良いということではないが、あまりにも生産、流通、消費までがせっかちになり過ぎて人間の生理を超えて進み過ぎたのではないだろうか。故に食品の事故や事件も起きたのかもしれない。
今、食べ物の有り様をスローにしていくことを手始めにあらゆる事に関して、ゆっくりと豊かに考え直すことが必要な時ではないだろうか。
スローフードを取り入れたスローライフを提唱したい。(藏)
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