CASE STUDY・・・・・

前号に引き続き共同店舖について触れてみたい。
 前号では、共同店舗のねらい・小売業の機能・期待される効果などについてのべたが、今回は共同店舗の性格・運営・課題等をテーマとする。
 さて、共同店舗の性格は次の式で表すことができる。

「大型店長所」+「地元商店街の長所」
       −「地元商店街の短所」=「共同店舗」

◆大型店の長所の例

    ワンストップショップ・品揃えの豊富さ・店内の開放感・サービス施設の充実・都会的ムードなど

◆地元商店の長所の例

 固定客の掌握・知名度・顔見知り・生活慣習の熟知・現業種の経験年数・小回りのきく活動・緻密な気配りなど

◆地元商店の弱点の例

 一国一城の主意識・独りよがり(ニーズの軽視)・固定客に安住・万屋的品揃え志向・商品企画力の弱体・人材不足・雇用経験不足・経営管理能力不足・他力本願など

 先に示した式は共同店舗の性格を的確に表しているものであり、共同店舗運営の成功の条件は、地元商店の弱点といわれいてることをいかに少なくするかにかかっている。
 共同店舗の設立にあたっては、まず基本コンセプトの確立、つまり目標づくりが不可欠である。
 それは、中小小売業者が共同で新しいものを生み出そうとする共同店舗にあっては、好むと好まざるとに拘らず極めて重要な意味を持つからである。
 共同店舗は本来、ひとつのコンセプトに基づいて、それに適合する中小小売業者などを集合させて、あくまでも「ひとつの店舗」として機能し運営するものである。
 一体的運営の内容についてはいろいろあるが、そのうちマーチャンダイジングからみた一体的運営が最も重要である。
 組合のマーチャンダイジングサポート機能は、大きく分けると

  1. 店舗全体の商品企画・商品調整
  2. 統一的な販売促進
  3. 売上金の組合一括管理・経営実態の把握―――

 に集約できる。
 これらのサポート機能については、県下のほとんどの共同店舗で、程度の差こそあれ実施している。
 共同店舗は、オープン後数年経つと課題が発生する。
 そのひとつは、一国一城の主意識の高まりである。本来商業者は、自分の自由にやりたいという意識をもっている。暫く抑圧されていたその意識が芽生えてくる。
 その二は、経営力の格差が明確になる点だ。夢とロマンを抱いて共同店舗に参画したものの、こんなはずでは…という思いをする組合員の出現である。
 その三は、感情の対立である。
 隣の売場の売上高が気になり出す。売場の第一線の多くは事業主の配偶者の女性である。その女性間の葛藤が共同店舗の運営に少なからず影響を及ぼす。
 顧客の集客条件整備の構築は組合の実施すべきことであり、集客した顧客を自店舗の顧客にし得るか否かは組合員の経営能力に待つ以外にない。しかし、人は自分の経営者能力を適正に評価することは、最も難しい。このことを要因とした共同店舗の運営の課題は、今後も間違いなく起こるであろう。


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中小企業静岡(1997年12月号 No.529)