CASE STUDY・・・・・
「モバイルコンピューティング PART1」
 
モバイル通信で移動体通信の課題を克服
加藤経営情報研究所
中小企業診断士 加 藤 忠 宏

いよいよ、今年もあと一ヵ月。組合の皆様も御元気でしょうか。さて、今回はモバイルコンピューティングをとりあげ解説する。
●移動体通信
 モバイルコンピューティングという言葉を知らない読者の方でも、PHSや携帯電話なら日常生活のなかで使いこなしていることだろう。例えば携帯電話を使えば自動車や電車に乗って移動している最中でも電話を受発信することができる。このように、移動中でも通信手段を確保することのできるコミュニケーションを移動体通信という。
 しかし、PHSや携帯電話には、以下のような強みと弱みがある。
【強み】
・相手とリアルタイムな通信が可能
・間髪入れないコミュニケーションが可能
【弱み】
・多忙な相手の時間を奪ってしまう
・場所によってはマナーを問われる
・大量のデータ等を送信できない
・通信コストが割高
・急いで会話するため正確を要する交渉には向かない
 ここに示した強みと弱みの根本的原因は、移動体通信の「情報同期性」的特質に依存している。つまり、相手とリアルタイムにかつ直接通信ができる代わりに正確性やマナーなどを犠牲にしているのである。ここに移動体通信の課題がある。
●モバイルコンピューティング
 以上のような移動体通信の課題を克服する手段として、モバイル通信がビジネスマンの注目を集めている。ここでいうモバイル通信とは携帯用のパソコンからインターネットやパソコン通信網を介して情報を受発信することである。
 インターネット? パソコン通信? といって敬遠することなかれ。モバイル通信はワープロ感覚で使いこなすことができる。なにより、現在東京の大企業では、モバイル通信のできない社員は電子メールのアドレスを持たないことから、「ホームレス」とか「サイバーフォビュア(電脳恐怖症者)」と揶揄されている実態がある。
●取引先との関係がかわる
 先だってコンサルティングでお邪魔した企業もそうだった。モバイル通信とはいわないまでも、大手取引先か電子メールによる見積り提出や、CAD(電子的設計)図面の提出をもとめられているのだという。
 つまり、大手の言い分を要約すると「取引先再編を行いますが、あなたの企業は私共についてこれますか? 選別の基準は電子メール等通信手段の合理化です」ということである。
 中小企業の立場は深刻だが、諸般の経済事情を勘案するとき、大手企業の言い分ももっともなことであるといえる。
 次回はモバイル通信の使い方について解説する。

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中小企業静岡(1997年12月号 No.529)