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シリーズ「くみあい百景」

運命共同体的絆で躍進する組合員

富士グリーン工業団地協同組合

住所:〒421-1221 富士市大渕4527番地の21
理事長:佐野 孝
組合員:13社
設立:昭和62年4月11日
TEL:0545-36-2200
FAX:0545-36-2611

 

組合設立経緯

工場団地組合全景

富士グリーン工業団地協同組合では、移転前の売上高と比較して10倍強伸びている組合員、三次請企業から一次に躍進した組合員、中国に進出した組合員などが複数いると聞いて佐野孝理事長、勝亦正巳事務局長と面談し、その背景を取材した。

昭和55年10月、富士市は市内の小規模事業に対して集団化移転に関する調査を実施したところ62社の希望があった。昭和57年に組合設立準備会発足、その後、企業診断を経て最終的には17社で昭和62年3月組合を設立した。

昭和63年5月用地取得後造成工事着手、平成元年8月第1期組合員工場14社及び組合会館の建築工事着手、平成2年3月完成。同年5月第2期組合員工場3社工事着手、同年11月完成し全組合員が操業を開始した。

この間の想い出を佐野理事長は次のように語った。「組合員は、住宅と工場が隣接する住工混在の中にあって工場の拡張はできず、騒音・振動の発生による公害問題を抱えていた。本当に小さな町工場ばかりで、移転に伴う高額な借金と、その連帯保証債務を背負い、本当に大丈夫かと疑心暗鬼に陥った」という。

しかし「公害や工場の狭隘問題を克服するためには、工場団地に移転するしかないとの決意と高額な借金、その連帯保証債務への覚悟を決めて17社の結集に至った」という。

そのような組合員に共通した問題と債務が、工場団地への移転を機に「運命共同体的絆」に変化し富士グリーン工業団地協同組合の歩みが始まった。

運命共同体は経営意識を変えた

佐野理事長(左)、勝亦事務局長
組合会館から見た組合員工場

工場団地完成後、佐野理事長は定期的に組合員工場に足を運び、気がついたことを遠慮なく伝えたという。

要る要らないものの区分と要らないものを処分、作業効率向上のための工具類の整理整頓、食品会社にあっては、清潔さを保つために清掃の徹底、これら決められた事を正しく守るよう事あるごとに助言を繰り返したという。

この行動は、意欲ある企業が取り組むムダ、ムラ、ムリを省きコストダウンを目指す5S活動「整理、整頓、清掃、清潔、躾」まさにそのものであった。

この助言が功を奏してか、実践した組合員は、信用を高め三次下請けから一次工場に躍進した企業が数社あるという。また、売上高も10倍〜15倍伸びている驚異的な組合員もあるという。

以前5S活動の定着は難しいと技術コンサルタントから聞いた事がある。まず経営者の意識改革があって従業員への指導徹底となる。

この背景について尋ねたところ、「運命共同体的意識によって、無意識のうちに私の助言となり、組合員の意識改革となったようである」と語った。

組合員であっても分度ある支援

組合は現在13社である。過去組合員4社が倒産し、幸いにして業績好調な組合員が、その跡地を買い取り債務も引き継いだことで事なきを得た。

佐野理事長は「運命共同体とは、全組合員が繁栄することを望むもので、不幸を分かち合うものではない。できるだけ組合員の倒産による不要な債務を受けないよう牽制することが肝要である」という。

この考えは、金融事業に反映していている。総会資料には、組合員ごとに工場団地内の資産評価、借入残金、貸付限度額が一目で分かる一覧がある。

そのことに対して「組合員には可能な限り支援するが、分度を越えた支援は全組合員を不幸にするとして融資に明確な限度額を設けた」という。

共同事業の意義

工場団地組合の組合員は、生産品目が異なるので組合員の事業活動に直結する経済事業の実施が困難である。

その一方で組合には事務局職員2名及び組合会館を有し、その運営資金を必要としているが、賦課金での負担を極力圧縮し、清涼飲料自動販売機の設置、給食や燃料の購入斡旋、共同警備など組合員の事業活動と直結しない共同事業による手数料収入で、その多くを賄っている。

その狙いは「工場団地移転を可能とした組合組織への帰属意識と今後も運命共同体として共に繁栄したいとする価値観を共同事業を通じて共有したい」との想いがあると語った。