指導員の現場から
組合のリスク管理



 昨今、不測の事態・リスクに備える必要性が叫ばれている。
 九・一一に代表されるテロのリスク、オイルショックや通貨危機などの経済的なリスク、政治的なリスク、自然災害などのリスク等があり、グローバル化の進展が国内の安全性や経済に思わぬ大きな影響を及ぼすことも少なくない。ようやく沈静化しはじめてはいるものの、リスクへの認識のあり方と対応策のあり方に、大きな警鐘を鳴らしているSARSも大きなリスクの一つといえる。
 その不測の事態を想定し、対策を講じておくことの大切さが再認識されている。
 景気低迷が続くなか、ここ数年、組合事業における債権保全に関連する具体的な相談が増えつつある。特に金融事業における組合員への転貸資金の貸し付けに関連して、その債権保全を組合としていかにするか、との相談内容が多い。
 その内容を詳しくお聞きしていくと、理事になると組合が金融機関から借り入れを起こす際の連帯保証人にならなければならない。不測の事態が起きないとも限らない状況下で、組合のため、組合員のためとは分かっていても連帯保証人になることに二の足を踏んで、理事への就任を辞退する組合員が増えてしまうことから、その対応に苦慮しているという。
 金融事業規約に基づいて実施されている転貸事業であるから、一応の保全策は取られている。
 しかしながら、突然、組合員が行方不明になってしまったり、銀行取引停止になってしまう事故が増えている。
 金融機関は当然、組合に事故を起こした組合員の転貸資金の返済をどうするか打診してくる。このような場合、理事会・委員会の責任等々が取り立たされ、往々にして理事や金融委員は、その対応に頭を悩ましてしまう。
 こんなことになるなら、いっそのこと理事にならないほうが…。
 このような事態に備えるため、組合員の出資金や預け金、保証金と債務を相殺するための、期限の利益の喪失に伴う相殺に関する約定を平時の時から取り交わし、組合の被る損害を少しでも軽減しようと整備を急ぐ組合。連帯保証をしている理事の負担を軽減するために、連帯保証人である理事と組合員が再保証契約を結んでリスクを分散させている組合もでてきた。
 あるいは、転貸利用残高を組合員の出資金や組合への預け金、保証金の範囲内に限定してしまった組合もある。
 組合員を取り巻く経営環境が厳しいなか、組合事業がリスクへの対応を重視するあまり、組合員にとって利用しにくいものになってしまっていないか?
 ご相談内容にケース・バイ・ケースでお答えをしているものの、組合の実施する経済事業のリスク管理の難しさを感じざるを得ない。
(東部事務所・植田)



中小企業静岡(2003年 7月号 No.596)