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「会計」




「教育情報活動の経理処理について」
 
特有の扱いや交際費との区分などに留意を

 
日野会計事務所       
税理士
 日 野 藤 司
 浜松市北寺島町215-22
 アステートビル4F
TEL 053-455-1801



■組合では、定款に基づき教育情報費用繰越金を計上していますが、毎年計上した額を消化しておらず、累計残高が貸借対照表上に残ったままになっています。今年の総会でも説明を求められましたが、答えに窮し未解決のままになっています。どのように処理したらよろしいでしょうか。
 また、組合員からの要請もあり、今後は研修事業をより積極的に展開したいと考えていますが、他に特別な取扱いや経理上の留意点がありましたらお教え下さい。


 
教育情報費用繰越金は、組合法で教育情報事業の費用に充てるため、毎事業年度の剰余金の二〇分の一以上を翌事業年度に繰越さなければならないと規定しています。従って事業目的に教育情報事業がある組合では、定款にこの定めがあります。
 定款には、教育情報費用繰越金の他にも、剰余金の処分として、利益準備金や特別積立金の積立が定められていますが、教育情報費用繰越金が「翌事業年度に繰越さなければならない」と規定しているのに対し、利益準備金や特別積立金は「積立てなければならない」と規定しています。
 すなわち教育情報費用繰越金は翌事業年度へ繰越すものであり積立てるものではありません。原則として翌事業年度で消化したかどうかにかかわらず教育情報費用繰越金の金額を戻入れることになります。
 この経理処理を示すと次の通りです。

(一) 剰余金処分が決定したとき
(借方)未処分利益××/(貸方)利益準備金××
           教育情報費用繰越金 一〇〇、〇〇〇
(二) 翌事業年度
(借方)教育情報費用繰越金 一〇〇、〇〇〇
    /(貸方)教育情報費用繰越金戻入 一〇〇、〇〇〇
(三)教育情報費用を支出したとき
(借方)教育情報事業費××/(貸方)現金・預金××

 戻入れたときの税務の取扱いは、教育情報費用繰越金は前期課税済の所得のなかから積立てられた積立金であるので、その戻入による利益は益金不算入となります。
 従って法人税の申告に当たっては、当期の戻入額を別表四において「教育情報費用繰越金戻入」として減算の「総額」欄及び「留保」欄に記載するとともに、別表五(一)において、当期中の「減」欄に記載しなければなりません。
 また、当期の剰余金処分による計上額は別表五(一)の「当期利益処分等による増減」欄に記載することとなります。
 貴組合の場合、教育情報費用繰越金の金額を戻入れとして収入に計上し、別表四で減算すればよいかと思います。

■研修補助や視察についても明確な経理を

「企業は人なり」といわれますが、特に中小企業は、人的能力に依存するところが大きいといえます。経営者自身の能力、後継者の養成、そして従業員。人材の育成が、企業や組合の将来の重要な鍵を握っています。
 こうしたことから組合事業のなかでも教育情報事業は重要視されているとともに、先の教育情報費用繰越金に代表されるように組合特有の経理処理があります。また、親睦など他の事業と併行して行なわれることも多いので経理区分が不明確になりになるなど気をつけなければならない点も多くあります。
 以下、主な留意点をあげてみましたので、ご参照ください。

・教育情報事業賦課金の仮受経理

 研修事業の費用を組合員から通常の賦課金と区分して徴収し、その目的となった事業が翌事業年度に繰越されたため剰余が生じた場合には、その剰余金を翌事業年度の経費に充てるための仮受金として経理することが認められています。
 これは当該剰余金が、益金として課税されると、租税として支払った額を控除した残額しか目的とした事業に充てられず、結果として事業が円滑に遂行できないこととなるためです。

・傘下団体への研修補助

 研修事業の目的で、組合員で組織している団体(研修委員会・二世会・青年会など)へ組合が補助金を支出した場合には、その支出額は研修事業費用となります。
ただし、事業経費の相当部分を組合が負担しており、かつ、次のいずれかの事実があれば、その団体の活動は組合と一体のものとみられますから、事業年度末にその団体に未使用の資金残高があれば、その部分を研修事業費用から戻入れする必要があります。
@組合の役員又は使用人で一定の資格を有するものが、その資格において当然にその団体の役員に選出されることになっていること
Aその団体の事業計画や運営に関する重要要件の決定について、組合の許諾を必要とするなど、組合が業務の運営に参画していること
Bその団体の事業に必要な施設の全部又は大部分を組合が提供していること

・交際費等との区分

研修会が飲食を伴う場合には、その飲食が通常供与される昼食の程度を超えない飲食物等であれば交際費とされません。
視察旅行の場合には、その旅行の中で行なわれる宴会費用・観光費用などは研修費用となりません。
ただし、その旅行の参加者が組合員だけであり、親睦を目的とするものであれば、交際費ではなく福利厚生事業費となります。

中小企業静岡(1998年 8月号 No.537)