静岡県家庭紙工業組合
▲組合のホームページ。アドレスは
 http://www2.shizuokanet.or.jp/usr/sitia/
再生紙製品の利用拡大に努力

下がり続ける再生紙製品のシェア

 全国一の紙の産地として知られる静岡県。中でも家庭紙(トイレットペーパー)は、富士・富士宮地区を中心に、県内の中小企業が全国の生産量の30%以上を占めている。
 静岡県家庭紙工業組合は、その家庭紙を製造する30社が加入する組合。
 トイレットペーパーには、古紙を再利用したものと、バージンパルプを原料としたものがある。
 従来から組合員をはじめ、中小企業が作るトイレットペーパーは古紙を利用し、大手の製品はバージンパルプを使っている。
 これまで、この分野ではシェアの大半を再生紙製品が占めてきた。しかし、年々
大企業によるパルプ製品が伸びを見せ、昭和60年に16%だったものが平成9年には34%にまで拡大している。
 「環境問題やリサイクルが注目されているのに、トイレットペーパーについては時代に逆行している。二度と再生できないトイレットペーパーこそ、古紙100%の製品を使うべきだと思うのですが…」と組合の佐野参事は残念そうに語る。

さまざまな方法で再生紙製品をPR

 こうした中、今組合が最も力を入れているのが、平成3年から行っている再生紙利用拡大事業。
 公共施設などへ再生紙製品の利用を呼びかけたり、各種イベントへの出展やインターネット上のホームページを通じて組合の活動を消費者にPRするなどして、再生紙を使ったトイレットペーパーの普及PRを行っている。
 また、平成4年には組合ブランドによるトイレットペーパー「SITIA」を発売。再生紙製品の品質の高さをアピールしている。
 「いくら古紙を集め、再生紙製品を作っても、利用されなければリサイクルしたことにはなりません。消費者の方には再生紙トイレットペーパーの良さをご理解いただき、積極的に使っていただきたい」と佐野参事は語る。

▲イベントなどで再生紙製品をPR

官民一体でキャンペーンを実施

組合では昨年12月に富士市や地元の商工会議所、商工会と協力して再生紙利用拡大キャンペーンを行った。
 キャンペーンでは、県内19の市役所や商工会議所、主要観光地の旅館組合などを訪問。再生紙の利用促進を訴えるとともに、再生紙トイレットペーパーの利用状況や製品への要望などを把握するためアンケートを行った。
 これまでこうした活動は組合単独で行っていたが、今回は行政や商工団体とともに官民一体となって取り組んだ。
 「市や商工会議所にご協力いただいたことで、我々の訴えが業界の利益のためだけではなく、環境保全と資源保護にとって必要だということをご理解いただけたと思います」(同)
 キャンペーンはTVのニュースや新聞で取り上げられるなど、各方面から注目を集め、組合にとって手応えの感じられる結果となった。

再生紙製品への正しい理解を

 再生紙製品のシェアが低下する理由として、再生紙は「品質が悪い」「高い」と考えられている点があげられる。
 しかし、再生紙製品はパルプ製品よりも長く巻いてあることが多いため、実質価格は安く、品質的にも遜色ない。
 組合では、こうしたマイナスイメージを払拭するため、さまざまな対策を検討している。
 その1つが製品にメーカー名を表示すること。不良品を排除し、品質に対する信頼を高めることがねらいだ。
 また、組合員全企業を対象としたLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)調査を行い、製品のみならず、生産活動における環境付加が優等生であることを実証しようとしている。
 このほか、再生紙製品であることが一目で見分けられるような統一表示を設けることや、コスト削減のための物流効率化なども検討している。
 トイレットペーパーの生産に再生紙を1トン利用すれば、立ち木20本分が節約
できるという。組合の地道な活動が1人でも多くの人に理解され、環境に優しい再生紙製品が普及していくことが望まれる。

 


中小企業静岡(1998年 3月号 No.532)