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・・・商店街活動
 「顧客は"満足"を買う」
 
注目したいデ・マーケティングの効果
野口冬樹事務所
中小企業診断士 野 口 冬 樹


消費者……
商業者A…
商業者B…
消費者……
 
商業者……
消費者……
 
商業者……
消費者……
静岡の物価は何故高い?安くならない!
決して高くない。調査方法に問題がある。
静岡の人は安くしても買わない。
それでは、何故大型店の出店に反対するの。
大型店も売れなければ撤退するのに。
それは…。
静岡のお店は「まけて」と言うといやな顔をする。
真顔になって。
それは、真面目に受け止めますよ。
買物をするときの社交辞令よ。


 これはある消費者懇談会における出席者の発言の一端である。
 静岡の消費者物価が高いか否か、調査方法云々については、商業経営者は触れない方がよいと、筆者はかねがね思っている。
 物価問題などは、しかるべき機関にお任せすればよい事である。
 それよりも、顧客を満足させる事に専念した方が良さそうである。
 顧客は本来「満足を買う」ものであるという。
 顧客満足はハード・ソフトから構成される。
 すなわち、店の品揃え・商品の鮮度・品質・安全性・デザイン・価格と言った基本的機能の充実はもとより、店舖構成・陳列・レイアウト・駐車場の有無などのハード面と買物時の接客対応・ふれあい・暖かさ・雰囲気といったソフト面の付随的機能を必要条件としている。
 価格は顧客満足の重要なファクターであることは否定しない。
 しかし、価格破壊の時期と異なり安くさえあれば、売れた時代はすでに過ぎ去った。
 一人ひとりの客をいかに大事するか、満足した客はリピーターとなり、しかも、「無給の営業マン」の役割を演じてくれる。
 口コミほど、有力なPRはない。
 ともあれ、「眼前の一客の満足に商人としてのすべてをかけよ」とは(株)やまと(株)アイドル矢島孝敏社長の言である。
 さて、デ・マーケティングという言葉がある。
 イトーヨーカ堂はかつてこんなキャッチフレーズを顧客に呼び掛けた。
 買物の前には必ず「自宅の冷蔵庫を覗いてから来て下さい」「2人連れ(他人と)で買物に来ないように」と。
 前者は不用な物は買わないように後者は相手を意識して、不本意に衝動買いをしないようにという意である。
 筆者クライアントのショッピングセンター内婦人衣料店では「3回来店したら、2回は何も買わせないで帰って戴く」を接客の原則としている。
 このようなデ・マーケティングの例は薬局、バイク店などにも見られる。
 デ・マーケティングは顧客との信頼関係を構築し、販売促進を図る戦略のひとつである。
 店に入ったら何か買わなければ出られない雰囲気の店。消費者が最も嫌う店である。
 店頭に「自由にお入り下さい」の掲示のある店は、来街者が自由に入れる雰囲気の無い証左と受け止められる。

 


中小企業静岡(1998年 3月号 No.532)