規制緩和の本意を問う
 
 国は産業構造審議会と中小企業政策審議会において、大店法(大規模小売店舗法)の廃止を答申し、新たに大型店の出店に伴う交通渋滞、騒音など周辺環境への影響を考慮した、大規模小売店舗立地法が制定されることとなった。
 何を隠そう私は審議会の一員であり、小売店の立場を強調したが、時代の流れには抗しきれず、いま内心忸怩たる思いがある。
 規制緩和が世界的な流れであることは、誰もが知るところであるが、私には最近の規制緩和のあり様には、行き過ぎがあるように思えてならない。
 ハッキリといえば、結果的に中小企業いじめ、すなわち大企業大資本一辺倒過ぎる事例が多い。
 九州の小都市では、郊外に複合的な大ショッピングセンターが建設され、中心街は疲弊し死の町と化した。
 その結果何が起ったかー。
 なんとマイカーのないお年寄りのために、町が税金をつかって買い物専用バスを運行せざるを得ない羽目に陥ったという、笑うに笑えない珍現象まで生まれている。
 人口十万人を擁する県内のある市長の話し。「ここ毎年毎年、中心街で店を閉める商店が増え続けており困っています。なんといっても商店街は町の顔ですからネ。このあいだ商工課の職員と話してましたら、市民のなかでは、正式な呼び名よりも”シャッター通り”のほうが定着している、と聞いて愕然としました」
 商店や伝統的な小企業は、一旦消滅すれば再び蘇ることは極めて困難である。
 新法が、そうした人の住むマチにふさわしい役割を果たしてくれることを切に期待する。
静岡県中小企業団体中央会・会長

中小企業静岡(1998年 3月号 No.532)