空き店舗事業の
ガイドラインを通達
 条件付きで現行法の範疇に
中企庁が「空き店舗事業」の指針を通達

中小企業庁は、十月二〇日付けで、「商店街の組合が商店街の空き店舗を活用した事業を行うことに関する中小企業等協同組合法及び商店街振興組合法の解釈について」と題する通達を、各通商産業局長及び都道府県知事宛に通知した。
 昨年九月、中小企業政策審議会組織小委員会が提出した「今後の中小企業組織化政策の在り方について」という中間報告の中で急務な課題とした、1.遊休資産の活用、2.新分野への支援、3.空き店舗対策のうち、1.は「員外利用制限の緩和」、2.については、「新分野進出への支援」というかたちで、十一月二七日、組合法、団体法の一部が改正公布された(本誌十二月号で既報)。
 一方、この中間報告で指摘された「空き店舗の活用」については、現行法で対応が可能であるという判断から通達で明確化されることとなっていた。
 このたびの通達は、商店街組合が行う空き店舗の活用に関する具体的な指針を示したもので、一定の条件をクリアした空き店舗事業は、現行の中小企業等協同組合法、商店街振興組合法でいう共同事業に含めることができる、としている。

進む商店街の「空洞化」
 これまで商店街は、単にモノを売るという機能だけでなく、地域に密着した街づくりや地域文化の担い手として期待されてきた。
 しかし最近では、モータリゼーションの進展や消費者の行動パターンの変化、大型店の郊外への進出などにより、中心市街地の衰退や商業機能の空洞化に拍車がかかっている。
 また商店街では、空き店舗が生じ、その結果、商店街全体の店揃えや品揃えの低下を招き、繁盛店までが苦戦を強いられる状況に陥っている。
 (財)中小企業総合研究機構が昨年三月に発表した「大型店の影響等に関する実態調査」では、商店街の景況として、「繁盛している」と回答した商店街は一割しかなく、反対に「衰退している」としたものは七割を超える結果が出ている。
 一方、問題となっている「空き店舗」の実態については、空き店舗率は平成九年で八・〇六%と、七年に比べて一・八ポイント上昇しているほか、七年から九年の間に空き店舗が増加したと回答した商店街は全体の三五%を占める結果となった(グラフ参照)。

障害が多い、空き店舗の活用
 こうした厳しい状況の中で、各商店街では、空き店舗から生じた不足業種を解消するため、個店の誘致等による対策を講じてはいるものの、条件面での折り合いがつかない等の理由から、空き店舗に新規業者を迎えることは極めて困難な状況にあるのが実態。
 こうしたことから、商店街自体が、空き店舗を取得するなどして、その商店街の不足業種を経営しようという動きも見られるようになった。
 しかしこのような方法は、これまで組合事業の法規定の解釈から、組合事業(共同事業)としては認められないとする運用がなされてきた。このため現状では、有志による会社形態での経営を行うしか方法がなく、このことが特定の商店主には大きな負担となっている。
 先に紹介した中小企業政策推進協議会組織小委員会の中間報告でも、こうした悪循環を早急に断ち切るための制度上の手当てを行うよう指摘しており、今回の通達で空き店舗事業のガイドラインが示されることとなった。

「空き店舗事業」とは何か

 通達では、商店街組合が空き店舗を活用して顧客向けに行う個店の経営事業や、商店街組合が空き店舗を取得して、個店の経営を行う事業者に利用させる事業を「空き店舗事業」と位置づけている。
 そしてこれらの事業実施に際
しては―――

1.商店街全体としての店揃え、品揃えを維持し、商店街全体の集客力を維持することにより、組合員の円滑な事業活動の実施に寄与する事業であること
2.空き店舗事業から、本事業の継続のために必要な収益以上の利益があがる場合は、商品の販売価格等を引き下げる等の措置を行うこと

という二つの条件をつけている。
 また、商店街に当該事業と競合する事業を営む事業者がいる場合には、その事業者に不当に不利益を被らせることのないよう十分配慮することとしている。
 商店街を空洞化させ、内側からむしばむ原因となっている空き店舗問題。
 商店街組合が行う空き店舗を活用した個店の経営等は、商店街の集客力を高めるために行われるものであれば、組合員の事業に直接効果を発揮するもの。
 この通達を契機として、空き店舗という”病巣”を逆手に取り、意気込みのある商店街がさらに一層活性化していくことが期待される。


 中小企業静岡(1998年 2月号 No.531)