伊東温泉旅館協同組合


関東だけでなく、県内にも積極的にPR

旅館組合の歴史は九〇年
 JR熱海駅から伊東線に乗り換えて約二五分。伊豆半島の東海岸にある伊東市は、天城山系を背に駿河湾に向かって開けた温泉観光地として知られる。
 今回ご紹介する伊東温泉旅館協同組合は、旅館業者八一人で活動する組合である。
 組合の歴史は古く、明治三九年に任意組織を発足して以来、九〇年以上にわたって活動してきた。
 昭和四五年には協同組合として法人化。設立と同時に組合会館を建設し、下駄やサンダル、タオル等の旅館用品の共同購入などの事業を活発に行うようになった。
 また、当時は求人難で、毎年夏が終わる頃に北海道や東北地方に出向き、冬期の季節労働者を集めるのも組合の大きな仕事だったという。

 
キャラバンを組んで誘客活動
 現在、組合では共同宣伝事業に最も力を入れている。
 伊東市を訪れる宿泊客は七割が関東地方から。東京から二時間弱という手頃な観光地として人気がある。
 そこで、組合では毎年キャラバン隊を組み、関東地方を中心に誘客活動を行っている。
 「宣伝先は旅行業者のほか、労働組合や大学生協などの団体が中心。団体が行う大会や大学の合宿などを誘致するのがねらいです」(竹井事務局長)
 また、誘客活動に合わせて、東京駅の利用客にみかんや温泉まんじゅう、鈴虫といった名産品をプレゼントするなど、一般客向けのPRも行っている。
 こうした中、昨年七月には初の試みとしてJRの協力で貸し切り列車を企画。東京から伊東までの交通費は無料にして宿泊客を招待し、三日間で三千人が利用するなどの実績も作った。
 一方、伊東市や地元の観光協会と協力しながら、さまざまな祭りやイベントの開催にも力を入れている。中でも毎年八月二二日には組合が中心となって「箸まつり」を運営。この祭りは今年で二二回目を迎える。
 「もともとは、旅館で毎年大量に使われる箸に感謝し、供養をするために行っていた行事。これを祭りにして、誘客に結びつけようということで始めたものです」(同)
 箸まつりでは、約十万膳の使用済みの箸を燃やす「箸供養」のほか、さまざまなイベントが行われ、毎年市民や宿泊客など四万五千人が集まり、賑わいを見せている。
 
地元からの誘客にも力を入れる
 近年、景気の低迷や海外旅行費用の低価格化によって、首都圏からの宿泊客は伸び悩んでいる。
 一方、これまで県内からの宿泊客は全体の一割程度。泊まるには近すぎるというイメージがあり、旅行先としては十分認められていなかった。
 この点に着目し、昨年九月には組合青年部がJR静岡駅でPRキャンペーンを行った。
 「組合としても県内から誘客するという意識が低かったのかもしれません。そこで、地元の方にも伊東の良さを知っていただこうということで始めたわけです」(同)
 また、組合では共同宣伝のための新しい媒体として、インターネットの利用を企画。伊東温泉や旅館のPRのほか、人材確保のための手段として、現在ホームページ作りに取り組んでいる。
 
全中会長表彰を受賞
 こうした積極的な事業への取り組みが評価され、昨年十月に宮崎県で行われた中小企業団体全国大会で優良組合表彰を受賞した。
 「長年の実績を認めていただき、組合員一同感謝しています。これを糧に個々の組合員が努力して、一層発展していきたいですね」と竹井事務局長は喜びを語る。
 伊東には温泉以外にも名所・旧跡や海水浴場、美術館や博物館など数多くの観光スポットがある。
 組合では今後もさまざまな活動を通じて、伊東の魅力を多くの人に知ってもらうための努力を続けていく。

 中小企業静岡(1998年 2月号 No.531)