・・・経営経済
「ビックバン時代の評価」
「どれだけいい仕事をしたか」が評価の基準となる時代
(株)大和シンク・エージェンシー
取締役社長 石 橋 達 也


 年末年始にかけて旅行をした。ツアーの解散時に旅行社の添乗員からアンケートが配られた。帰ってから会社宛に郵送して欲しいとのことである。
 旅行会社のアンケートであるから「この旅行に満足したか」「日程・行程はきつかったか」「ホテル施設や食事は満足だったか」など、従来は今後の商品企画の参考とする事項が多かったが、今回はその部分は僅少。
 添乗員の対応そのものを中心とした内容に大きなウエイトが置かれている。これは何を意味しているか?

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 金融システム不安の不景気下で、米国・ムーディー社の日本の金融機関に対する格付けは、押し並べて格下げの傾向にあり、世界に対する信用の低下を象徴している。経済も景気も昨今の情勢は、日本という限定した観点ではなく、世界的な視野での判断が必要となってきた。
 「国際化」と「グローバル化」とは異なるといわれる。
 いずれも日本と世界との関わり合いの問題であるが、「国際化」は日本にスタンスを置いて世界情勢を判断する場合に使われ、「グローバル化」とは、世界にスタンスを置き日本の現状を判断する場合に使う、と某セミナーで聞いた。グローバル的スタンス(外部からの視点)で地域問題や経営や人事を再考してみる必要があろう。
 日本版ビッグバン(金融の大改革)のように、規制緩和が人事にもたらす変化の一つに「年功序列」から「成果主義」への評価基準の変化がある。従来は「年功」「ポスト」という序列で運営されていた。
 賃金や賞与や細かいことをいえば出張の際の「日当」や「旅費運賃」(グリーン車か普通車の差)などに「年功」でより刺激を与え、奮い立たせてきた。
 既存の規制を緩和する潮流は、金融機関の「護送船団方式」を解消する如く、強い規制期間中の年功という秩序、別の表現をすれば上位下達の最優先が崩れることである。
 内々で波風を立てない「ナアー、ナアー主義」の社員が、よい評価を得られる評価制度が否応なく崩れていく。でないと熾烈化する「企業間競争」を勝ち抜いていくことが出来ないからである。
 地方の中小企業の中には理屈はわかってはいるが、今そこまで踏み切れる企業は少ない。それは幸いなことにまだ過去の蓄積があり、経営者自身が荒療治に踏み切れない場合と、マクロ感覚の転換に遅い中小企業社員にとって、戦後半世紀続いてきた「序列制度」を当然と受け止め、あえて熾烈化した競争の場に投ぜられることを望まない意識が強いからであろう。
 今、求められている評価は、従来の慣行を踏襲して行うことや、上司の命令通りにやる能力や、マニュアル通りに仕事をする能力ではない。
 実際にどれだけ成果を上げたか、どれだけ顧客の満足度を高めたかという実績遂行の評価である。
 結果としてどれだけいい仕事をしたかの評価が重要なのである。
 そうした評価を下す要素を知る上で、今、各業種・企業の間でいろいろな「CS度(顧客満足度)調査」が盛んである。
 外部から、社員の“仕事ぶりアンケート”をとる必要がある。

 


 中小企業静岡(1998年 2月号 No.531)