・・・商店街活動
「消費者に何を訴えるか」
 
明確なコンセプトが魅力をつくる
野口冬樹事務所
中小企業診断士 野 口 冬 樹
所用で新潟市に行ったときのことである。新潟駅前のレストランに入った。時間が無いので、早くできるメニューは? と聞けば、ランチメニューという。
 若い同行者はカレー、小生はハンバーグをオーダーした。生野菜・コーヒー・ジュース類の飲み物はバイキング方式で何杯でもOK。
 価格はバイキング方式の生野菜・飲み物付きでカレー五〇〇円、ハンバーグ七〇〇円と格安である。
 ところがである。若い同行者はカレーを三分の一食べたところで終わり、小生に「ハンバーグ美味しい?」と聞く。
 「美味しくない」と答える。何せハングリー時代を経験した小生、無理にでも口にいれる。それでもライスを半分残す。米どころ新潟にしては、ダンゴ状のライスである。
 そういえば、静岡県下の幾つかの市の駅前飲食店のオーナーが異口同音に、最近は売上不振で困るといったことを思い出す。
 従来は駅前という好立地条件で結構飲食店は成立できたが、最近では立地だけでは商売は成り立たない。
 確かに駅前商店街には、駅乗降客の利便性を提供するという視点で飲食機能は不可欠といわれてきた。
 それら飲食店の多くが程々の値段で可もなく不可もない味付け商品を提供するのが一般的であった。
 ファーストフード店の進出もあって、こんな飲食店が今、客数の減少に悩んでいる。
 駅前飲食店の多くが、従来一見の客相手の商売感覚であったことは否定し難い。
 消費者嗜好の変化に伴い、従来型の飲食店の不振は今後も継続することであろう。
 あの街の駅に降りたら、駅前の「あの店」で食事といったものがないと繁栄はおぼつかなくなった。
 誰に、何を、どのように提供するかというコンセプトが明確でない飲食店は、消費者の選別に耐えられない。
 反面、飲食店は「味」の差別化を武器に立地条件は恵まれなくても「こだわりメニュー」を求めて顧客は来店している。
 翌日、新潟市の中心商店街「古町商店街」をウオッチングした。
 全蓋アーケードの路上には、所狭しと露店が出店している。
 聞けば、それでも昔と比較すれば出店者は減少したといい、夕方六時まで営業するという。
 出店は日本海の幸の鮮魚をはじめ、青果・日用品・衣料・鞄までの品々である。
 商店街の店舗の同業と全く同じ品揃えである。
 露店と商店街の店舖は共存共栄。今のはやり言葉でいえば「共生」であり、競争的共存によって、生活者に豊かな選択肢を提供し、商業集積としての魅力を高めている方策の一つともいえる。
 それにしても、本当に商店街の店舗が、露店の出店を許しているのかという老婆心が頭をよぎる。
 ともあれ、庶民的といえば庶民的な商店街である。
 しかし、広域型の商店街というのには、相応しくない。
 人口でほぼ同じ静岡市の中心商店街のほうが、商店街が整備され広域型商店街に不可欠な非日常的な雰囲気づくりにおいて優れているという思いをもって帰静した。

 中小企業静岡(1998年 2月号 No.531)