磐田さぎさか工業団地協同組合
 積み上げてきた地域との調和

構想から約十年で団地を完成

 浜松市に連接する磐田市。天竜川に面した匂坂地区に広がる工場群が、今回ご紹介する磐田さぎさか工業団地協同組合である。
 団地建設の話が持ち上がったのは昭和五〇年代初めのこと。当時、住工混在の環境下で工場を経営していた磐田市内の中小製造業者が、騒音などの公害問題の解消や設備の近代化を目指して準備を始めた。
 その後、計画が進む中で周辺市町村の企業も参加し、昭和五八年十一月に組合を設立。高度化資金を活用して団地建設を進め、昭和六一年九月に完成した。構想から約十年を要したことになる。
 現在組合員は二二社。団地進出によってそれまで抱えていた課題も解消され、各社の業績も向上するなど、大きな成果を上げている。

▲組合会館
▲全天候型でシャワールームも備えたテニスコート

組合員への給水などを共同化

 組合の共同事業のうち、金融事業と並ぶ柱となっているのが、組合員への給水施設や廃水処理施設の維持管理。
 「この地域は上下水道が設けられていないので、組合が独自に井戸を掘って組合員に給水しているんです。月に約二千トン供給しています」(大杉事務局長)
 従業員のための福利厚生事業にも力を入れており、共同駐車場やテニスコートなど施設も充実。特にテニスコートは全天候型のハードコート三面に夜間照明やシャワールームも設けられており、年間二〇〇面以上利用されている。
 また、毎年行われるボウリング大会には従業員一二〇人が参加。
 「この大会は役員からの協賛をいただくなど景品も豪華。毎年盛大に行われ、従業員の皆さんも楽しみにしています」(同)
 こうした事業を行う一方で、後継者育成のため青年部活動にも力を入れる。
 団地建設と同時に発足した青年部「磐田さぎさかJC」では、団地運営や経営分析などの研修を行うほか、ボウリング大会の企画なども担当。組合にとって欠かせない存在となっている。

全中会長表彰を受賞

 組合運営の中で特に重視しているのが地域との調和。
 団地建設の際には、近隣の自治体から公害の発生を懸念する声も多かった。組合では住民の理解を得るため、団地の性格や公害対策に関する説明会を何度も開いている。
 こうした経緯があるだけに、組合では環境面に最大限の配慮を払ってきた。
 磐田市や地元の漁業組合との間に公害防止協定を結び、静岡県の基準を大幅に上回る排水基準を設置。これを守るために環境アセスメント会社と契約して水質や騒音の調査を行い、その結果は市や地元の自治体に報告している。
 また、地元住民との間で連絡協議会などを設け、団地内や汚水処理工程の見学会も行っている。
 「当初は住民の皆さんも心配されたようですが、公害防止協定の基準は常に守られてきました。長年の実績を評価していただき、今では地域の方も組合の活動をよくご理解いただいています」(同)
 数年前より、組合では市内の小中学校の工場見学を積極的に受け入れる一方、地元の農家が組合会館前に「無人良心市」を設置、従業員に安くて新鮮な野菜を販売するなど、地元住民との関係は良好である。
 このように地域との調和に配慮しながらさまざまな事業を行ってきた実績が認められ、昨年十月に行われた中小企業団体全国大会で優良組合表彰を受賞した。
 「これまでの活動を評価していただいて嬉しい。組合員企業の経営環境は相変わらず厳しいですが、これを励みにがんばっていきたいですね」と大杉事務局長は喜びを語る。
 団地建設から十一年。昨年十一月には団地のすぐそばに天竜川を渡る「かささぎ大橋」が完成したことで、東名浜松インターから車で約五分と交通の便が良くなった。組合では今後も地域と共存しながら、さらなる発展を目指して活動を続けていく。


 中小企業静岡(1998年1月号 No.530)