CASE STUDY・・・・・ 経営 経済
「恐怖の土曜日と地盤激変」
 
認識を変えなくては生き残れない時代に

             (株)大和シンク・エージェンシー
             取締役社長 石 橋 達 也

 明けましておめでとうござます。 今年もタイムリーな〔ケーススタディ〕を記載していきたいと存じます。
              ▲ ▲ ▲
 さて、昨今(といっても、本原稿を書いているのは11月27日だが)どうも「土曜日」が怖い日となってきた。
 というのも、11月15日(土)に都銀の北海道拓殖銀行が経営破綻、そして翌週22日(土)に天下(?)の山一証券が自主廃業という発表がされたからである。
 土曜日が選ばれたのは、市場や店頭が閉じられている2日間に、冷却期間を置き世間のボルテージを冷やそうとする意図であろう。
 昨今の金融システムの混乱を思えば、毎土曜日に何が飛び出すか?
 まさに「恐怖の土曜日」の連続である。
 金融ビックバンが叫ばれて久しいが、その地盤の激変が具体的事象となって現れてきたのである。
             ▲ ▲ ▲
 企業経営をめぐる環境変化は、いろいろな機会で叫ばれているごとくその激変期を迎えている。
 以前の環境における認識(既存の認識・常識)を改め、考え直さなくてはいけない事態が本年は随所に顕在化してくることを予測しなくてはならないだろう。
 仕事の仕方やその取り組みの意識もしかりである。「規制緩和」時代に対応の遅れた、あるいは先取りしないところが「篩いにかけられている」のである。
 労働の世界も例外ではない。
 昭和22年に出来た労働基準法は、「時間=賃金」を基礎としてきた。製造工程を前提に考えれば、機械が動く時間=生産時間=社員の稼働時間=賃金の図式がある。
 サービス業に働く社員やホワイトカラーには前出算式は当てはまらない。時間 賃金の世界である。生産性と時間が密接・厳密には結びつかないのである。しかし、従来の「時間対応賃金の認識」では、その違いがなかなか理解できないであろう。
 「金融ビックバン」前後の認識の相違と同じである。しかし、確実にその認識をかえていかなくてはならない時代が来かかっている。
            ▲ ▲ ▲
 昨年11月に開かれた労働基準法改正を審議する中央労働基準審議会の最終報告案がまとまった。98年の通常国会に改訂案が提出されるだろう。
 それは、実際の労働時間にかかわらず一定時間働いたと「みなす」『裁量労働時間制』の対象を、従来の研究職などから、ホワイトカラー層全般に拡大することを打ち出している。
 もっとも、新入社員や単純作業だけに従事するホワイトカラーは除外されるだろうが…。
 一時間居残ったら〇〇円残業手当がもらえる、といった「残業稼ぎ」や長い残業(=拘束時間)を見越して総賃金から逆算した「低い基本給」という賃金通念がナンセンスになる世界である。
 本年の労働基準法改正を見越して、社員の残業に対する認識や仕事の成果・実績と賃金との関係づけが緊密であるという認識を一日も早く社内のコンセンサスとする必要がある。
 地盤激変の時代、昨日の認識は今日の非常識となる年になりそうだ。

 中小企業静岡(1998年1月号 No.530)