ものづくり補助事業 成果事例集 基金事業
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5医療機器の受注を得るためには、試作品をスピーディに提供することが効果的と判断した。同社はこれまで既存の生産ラインの合間を縫って試作を行っていたが、量産品の生産に支障を来すことも多く悪循環となっていた。こうした非効率性を解消するため、試作専用ラインの確立に着手した。まずは「試作開発部」を立ち上げ、専属スタッフを配置。専用設備を導入して既存の生産ラインと分離し、試作品開発に集中できる生産体制を構築した。技術的課題の解決には、複雑な曲面加工が可能な5軸マシニングセンタを導入し、試作開発専用機として活用した。また加工条件に合った最適な治工具により、段取りの手間を省きコスト削減にも貢献。また、加工条件を決める3次元プログラミングでは航空宇宙分野で培った同社の精密加工技術が役立った。耳鼻咽喉科用「鉗子」の試作には、溶接箇所など加工方法を事前に検討した後、図面製作、材料形状の確定、試作加工を繰り返し、試作品の完成に至った。また「鉗子」が他の治療科でも用いられ多品種少量生産が条件となることを考慮し、共通部品は切削ではなく鋳造による製造を検討。コストと効率を両立した最適な加工方法を模索した。さらに医療メスの刃付けには、同社に無い研磨仕上技術を確立する必要があり、研究を重ねることで新たな生産技術を習得することができた。導入したマシニングセンタスピーディな試作品提供体制の構築に取り組んだ当計画であったが、当初の試作品はメーカーが要求するレベルを十分に満たすことができず、厳しい評価を受けた。医療機器は、利用する現場の医療従事者が意図した通りに動くことは当然として、トラブル時を含めあらゆる使用ケースを想定して開発する。万が一正しく動かなくなってしまった場合でも患者や医療従事者への損害を最小限にとどめることが条件となる。そのために医療機器の開発は詳細な仕様を設定し、それを確実に検証し、品質を高めていく。同社は試作と評価を繰り返すことで参入障壁を乗り越え、現在は数多くの医療器具を現場に届けている。試作品の提供から正式な製品化に至るまでは根気の要る作業だが、医療用機器は様々な種類が存在しており、ひとつの実績が次の引き合いを得るチャンスにつながる。また、不足する技術を補うため、想いを同じにするものづくり企業でネットワークを構築し、事業協同組合も設立した。本事業に取り組むことで、加工技術の精度向上と社内の生産効率アップにより、量産型企業の同社が試作品の短納期体制を確立して医療機器市場に本格参入することができた。今後も医療現場のニーズに応えるものづくりに取り組み、必要とされる製品を提供することで人々の健康に貢献できるよう、努力を重ねていく意向である。事業成果として完成した「鉗子」具体的な事業内容医療機器の開発ニーズを満たすため、スピーディな試作品提供を実現する社内体制づくりに着手。これまでの“量産型”から、“高付加価値型”ものづくり企業への転換を目指し、マシニングセンタなどの設備を導入。同時に、保有技術のレベルアップで試作品提供の短納期化に取り組み、医療機器分野への受注開拓を実現した。専用ラインを構築し、試作品の早期提供を実現取り組みの内容ものづくりで救える命もあるはず結  果ものづくり補助事業 成果事例 2

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