ものづくり補助事業 成果事例集 基金事業
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3酸洗いを内製化する企業は近隣になく、独自性の高い事業である。同社はこの強みを活かすため、酸洗いの作業効率向上を目指し、技術的課題の明確化に取り組んできた。そこで①低温下では酸洗液の効果は劣化し余分な作業時間が生じること、②酸洗液はかく拌し流動性を高めることで洗浄効率が上がり作業時間が短縮すること、③酸洗で除去した不純物は固形化して沈殿させるが排出時の処分工程は自動化すべきこと、④処理後の加工品の乾燥には広いストックヤードが要る点を挙げ、具体的な改善に取り掛かった。本事業が採択されたことでまず設備を一新した。酸洗処理施設は季節により酸洗液の温度が変動しないよう温度管理機能を付与したほか、処理槽内で液をかく拌することで酸洗いの効率を高めた。その結果、冬場で最長5~6時間を要した浸水時間が2時間程度に短縮。従来の2~3倍の速度で処理が可能となり、年間を通じ作業時間の平準化を実現した。廃水処理施設は、処理能力を2倍に増強し、酸洗液の酸性を中和・希釈し、法令を遵守し適切に排水する。また液中に溶け出た金属成分は凝縮・沈殿させるが、その残滓処理は従来の手作業から機械による自動化を果たし、省力化とスピードアップを図った。さらに狭きょう隘あいだった酸洗後の加工品乾燥場も大型製品が配置できるよう、スペースを確保した。不純物の除去や耐食性を高める酸洗処理槽本事業に取り組み、従来の酸洗工程の改善を図ったことで、ステンレス材加工の高品質化及び作業時間の短縮による高効率化を達成した。また廃水処理においても、作業性が向上し、企業全体としての生産性向上に大きく貢献することができた。なお、同社には入社40年のベテランをはじめ勤務歴20年以上の社員が多く在籍しており、熟練した職人集団として高い技術力を有している。また溶接や板金、危険物取扱者など資格を取得しているほか、後輩社員への技能伝承も積極的に行っている。こうした熟練技術者の存在を背景に、同社がこれまで蓄積してきた溶接等の加工技術に加え、この度の事業により技術的課題を克服したことで「ステンレス溶接とその後の高品質な酸洗処理を行う一貫体制」を確立することができた。また、こうした取り組みは今後の受注活動に際し同業他社に対し、競争優位性を示す要因となる。同社製品の主な納入先のひとつである半導体関連市場は、世界的な供給不足状態が続いているが、今後供給が回復すればステンレス溶接加工の需要も急増する一方、短納期の案件が増加すると見込まれる。本事業で構築した生産体制を基盤に、さらなる生産性向上や人材育成を強化することで、付加価値の高い企業体質を目指す。酸洗前酸洗する前と後のステンレス鋼の比較酸洗後具体的な事業内容ステンレス溶接の工程における「酸洗処理」の能力強化と作業効率アップに取り組んだ。設備更新で処理槽を大型化するとともに、酸洗液による洗浄工程を効率化させ処理品質の向上、作業時間の短縮を実現。同時に廃水処理の自動化と作業環境改善を行い、ステンレスの溶接から酸洗まで一貫して提供できる体制を確立し、多様化する顧客ニーズに柔軟に対応していく。設備を一新し、酸洗いの効率化を追求取り組みの内容溶接から酸洗まで、ステンレス材の加工に伴う一貫体制を確立結  果ものづくり補助事業 成果事例 1

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