ものづくり補助事業 成果事例集 補助金事業
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17前述の課題に加えて、同社では生産工程にも課題を抱えていた。現行の加工機は、加工中に砥石の寸法を計測できず、精度を確認するため、完成までに何度も加工機から取り外し、投影機で計測する必要があった。さらに、砥石加工時と出荷検査時に別の担当者が投影機で計測するため、投影機の稼働が2度必要になるなど効率面の問題を抱えていた。このような背景から、同社では「複雑かつ精密な形状をした製品の検査体制の確立」と「生産工程の効率化」を目指し、本事業を活用して、ダイヤモンド砥石自動成形盤を導入した。本機は、機上投影装置が付いており、砥石を取り外すことなく直接測定できる。通常、この投影装置には、固定倍率の簡易CCDカメラと固定目盛が取り付けられており、あらかじめ設定したレンズの可視範囲しか見ることができない。しかし今回は、本事業の目標を達成するため、倍率を変えることが可能なデジタルズームCCDカメラとソフトウェアを組み合わせて、コンピュータ上で可視範囲を自由に設定でき、CAD図面をカメラ動作に重ね合わせて表示できる加工物撮影装置を搭載するよう機械メーカーに依頼し、開発を行った。代表的な砥石の形状機械導入後、過去に引き合いのあった製品の試作を行った。モニターに表示した砥石とCAD図面とを重ね合わせて表示することで、高精度の計測、検査を行うことができた。加えて、加工中の砥石を常時モニターで表示できるため、従前のように投影機を何度も使用することが無くなった。また、表示される映像は、IoT技術によって、インターネットに接続する他のコンピュータで見ることができ、顧客、検査担当との確認作業も即時に行うことができるようになるなど作業工程の無駄を省くことができた。このほかにも、これまでの手動加工機の自動化によって、凹凸、円弧や角度形状といった様々な形状の自動運転加工が実現し、これにより作業者は機械の多台持ちが可能となり、生産性の向上に繋がった。以上のような生産工程の効率化を図ったことで、これまでの製造(砥石加工)と検査(計測)を段階的に行う生産工程から製造と検査をタイムレスに進められる同時進行型(スマートシェイピング)の生産体制に発展させることができた。事業終了後もQRコードを活用した生産管理システムの確立や他の生産工程の自動化に取り組んでおり、今後も同社の取り組みに注目していきたい。導入した自動成形盤により生産性が向上具体的な事業内容「複雑かつ精密な形状をした製品の検査体制の確立」と「生産工程の効率化」を目指し、IoT技術を活用したダイヤモンド砥石自動成形盤を導入した。その結果、これまで受注し得なかった製品への対応と非効率な生産工程の改善が実現するとともに、IoTで情報を共有し、加工、計測、顧客の確認を同時に進行できる生産体制が確立できた。独自の機上投影装置を搭載した砥石自動成形盤を導入取り組みの内容検査体制の確立と作業工程の改善により生産性を向上結  果ものづくり補助事業 成果事例 8

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