職場の防犯対策
〜事業所を取り巻く犯罪情勢〜


 近年、新たな手口による犯罪の急増など、「安全神話は終わった」と思わせる事件が次々起きています。中でも事業所は、窃盗や強盗など犯罪の発生件数が多く、その防犯対策が急務とされています。
 こうしたことから今回は、具体的な事業所を対象とした犯罪の事例やその対策について、静岡県警察本部 生活安全企画課防犯対策推進室にご執筆いただきました。




 職場防犯管理者制度とは

 近年、刑法犯の発生は、全国的に増加しているほか、益々凶悪化する傾向が見られ、また、これまで予想もしなかった新たな手口による犯行が増えています。
 刑法犯の約九割は窃盗犯が占めており、過去五年間に全国で発生した犯罪を発生場所別に分析した結果、刑法犯発生場所の約三割を占める事業所の防犯体制の確立が求められました。
 また、事業所に対するアンケートの結果、八割以上が窃盗や強盗の被害に遭う危険を感じていることも分かりました。
 そこで、考案されたシステムが職場防犯管理者制度です。

五千五百余の事業所が加入

 この制度は、これまで特定業種を対象に行ってきた警察主導の防犯対策を見直して、事業所ごとに防犯責任者を置いて自主防犯を進めることを目的としたもので、全国に先駆けて静岡県で考案されました。
 事業所は、自主防犯活動を効果的に推進するための責任者(以下「職場防犯管理者」という。)を置き、職場防犯管理者を中心に各事業所の職種や事業所の規模などに応じた防犯設備の拡充を図ったり、従業員に対する防犯指導を行うなど、きめ細かな防犯活動を行います。
 昨年七月に設立された静岡県職場防犯管理協会には、趣旨に賛同した県下五千五百余の事業所が加入しております。

制度発足から一年 現在の状況は

 昨年七月の発足以来、一年が経過しましたが、この間、事業所が被害に係るおそれの強い種々の犯罪に関する情報を提供し、事務局から「職場管理協会ニュース」として、会員の皆様に情報提供して参りました。
 また、この程、事業所の防犯テキストである「職場防犯管理者の手引き」が完成し、会員の皆様にお届けをしたところであります。
 そして、このテキストを基に、六月二五日〜二七日に、県下三会場に於いて、各地区の代表者一七〇人が参加して、防犯スクールを開催いたしました。
 防犯スクールでは、警察から最近の犯罪情勢を踏まえた事業所の防犯対策について指導をさせていただいたほか、静岡県防犯設備士生活安全協議会のご協力により、各会場において、防犯設備士の方によるピッキング等の鍵破り方法などの実演を交えた講義を行っていただきました。
 参加者の会員からは、「講習内容を各地区に持ち帰り、他の会員に伝えたい。」との声が多くあがり、有意義な研修会となりました。




中小企業静岡(2003年 7月号 No.596)