富士の叫び 
 FLASH 
 特 集 
 静岡労働局から 
 シリーズ「くみあい百景」 
 編集室だより 




ゴーン経営に何を見るか

 次の総理大臣は、ゼヒともカルロス・ゴーンにやってもらいたい――さる経済人の集まりで突然そんな発言が飛び出し、しばし話題をさらった。そうだ、そうだ!との賛成意見が大半であったが、「総理大臣は憲法(六七条)で、国会議員の中から選ぶことになっているから…」との弁護士の発言で話題は途切れた。
 パロディーめいた会話ではあるが、私は二ツの意味で含蓄深いものとして理解した。それは政治の大転換を図って、とにかく景気をなんとかして欲しい、という産業界の痛切なる声。そしてあの倒産寸前だった日産を、アッという間に借金ゼロ・史上最高の利益を上げる優良会社に仕立て上げたゴーン経営への高い評価を実証したことだ。
 実は私は、日産の産業用機械の販売会社の代表者を務めているので、ゴーン氏の経営手腕については、直接身近に感じており、まさに日産の救世主であり、経営者としては本田宗一郎氏と比肩すべき第一級の経営者と確信している。
 彼は、就任早々に主力工場の閉鎖や厳しいリストラを断行。また、会社のシンボルである銀座本社を売却し、そこをそのまま借りて本社にするなど、前評通りのコストカッターぶりを発揮した。
 しかし、一方この四年間で「日本人のもつ優しさ、親切さが一番にうれしい」など殊勝なことも言い、日本で失敗したら腹を切る。と断言してみたかと思うと、真っ先に廃部すると思われていた横浜Fマリノスの存続を約束し、先の春闘では、他社にさきがけて満額回答をするなど、浪花節的発想も駆使して、日本人の心を惹きつける。 
 ゴーン氏がなぜ奇跡のV字回復を成しえたか、もちろん多様な要因が集積したものであろう。私があえて要約すれば、この大変革の時代に全社あげての徹底した“意識改革”に行き着くと思う。 
 今日のあるは、昨日の続きであるが、明日は、決して今日の続きであってはならないのだ。

静岡県中小企業団体中央会・会長 


中小企業静岡(2003年 7月号 No.596)