協同組合環境デザインボックス
地域の特性を活かすまちづくりを提案

 地方の時代といわれて久しい今日、地域のまちづくりを組合で行おうという事例も増えている。
 今回ご紹介する協同組合環境デザインボックスもその一つ。磐田市や袋井市などの建築家やデザイナー、造園業者など10社が加入している。
 組合の前身である任意グループが発足したのは昭和61年。県建築士会中遠支部の青年部の有志で活動を始めた。
 「立派な建物を一つだけ作ってもまちは良くならない。地域の特徴を生かした建物などが並ぶまちなみのあり方を提案していきたいと考えてグループを作りました」(岡田理事長)
 その後、違う分野の知識やノウハウを導入するため、造園業者やデザイナーなどが活動に参加し、平成4年2月に組合を設立した。

「住民参加ではなく「住民主体」で
 主な事業はまちづくりコンサルタント業務の共同受注。周辺の市や町からまちづくりプランの策定を受注。調査や研究を行ってその地域の歴史や文化を活かしたまちづくりを提案している。
 例えば、平成7年から8年にかけて磐田市および大須賀町から受注した、「歴史のかおるまちなみ整備事業」では、行政担当者や住民、商業者などと研究を行い、歴史的建造物が数多く残るこの地域の特性を活かしたプランを提案した。これをもとに旧見付宿入り口のモニュメントが建てられたほか、現在も木戸風モニュメントや欄干などの建設が進んでいる。
 「こうしたまちづくり計画は大都市のコンサルタントに発注されることが多かったんです。しかしその土地のことをよく知らない業者が作ったプランは実行困難なものが多い。我々としては地域の活性化という視点の中で、実行可能なプランを提案することを心がけています」(同)
 組合が事業を行う中で重視するのは住民の声を反映させること。
 「住民の声を聞かず、押し付けの計画を進めてもうまくいかない。やはりまちづくりの主役はそこに住む人たちです。“住民参加”では不十分。“住民主体”のまちづくりでなければならないと思います」と岡田理事長は語る。

組合事業の拡大を目指して
 設立から5年間に、組合では18件のまちづくりコンサルタント業務を受注してきた。しかし、受注額は当初期待したほどには伸びなかったという。
 そこで組合では、昨年度に活路開拓ビジョン調査事業を実施。組合の受託業務を単なるまちづくりから地域活性化、商業振興、環境問題など幅広い分野のコンサルタント業まで拡大することなどを目指して研究した。
 「まちづくりというのはボランティア的な面があって受注額は低くなってしまうんです。今後も組合としてビジネスを続けていくためには新しい事業を検討する必要がありました」(同)
 研究を進める中で、組合ではいくつかの事業を導入した。
 そのひとつは、環境デザインに関連するアイテムの開発。まちなみを演出するベンチや遊具、案内板などを考案していこうというものである。
 また、組合や組合員が持つまちづくりに関する情報をデータベース化し、この情報を外部に提供するサービスを行おうと、今準備を進めている。

活動の場を広げて組織を強化
 組合では6月に春野町で「中山間地の地域づくり」と題した一泊二日の実践講座を開催。静岡大学の小櫻義明教授の講話や、この町のあり方についての討論を行った。講座には約60人が参加して、熱心に意見が交わされた。
 「これまで我々の活動は市街地のまちづくりに目がいきがちでしたが、このイベントを通じて農村地域などにも活動の場があることがわかりました」と岡田理事長は手応えを感じている。
 組合では今後、まちづくりに携わっている人や団体とのネットワークを作ることで、現在組合の中にない人材やノウハウを補いながら、組合組織の強化を図っていくという。
 各地で地域おこしへの関心が高まりを見せる中、組合の活動の輪が広がり、住民主体のまちづくりが活発になることが期待されるところである。


中小企業静岡(1997年12月号 No.529)