経営状況はどうか?
現在の経営状況を過去のデータと比較してみると、本県では、経営状況が「良い」と回答した事業所の割合が8年度と比べて一ポイント上昇したほか、「悪い」と回答したものも、6ポイント減少している(G―3参照)。
こうした数字をみると、経営状況はごく僅かながら上向いているという見方もできるが、相変わらず「悪い」とする数字が四割を超えている点を考えると、経営は余談を許さない状況に置かれていることに変わりない。
ここでも、県内のデータを業種別にみると、製造業では、「木材・木製品製造業」で「悪い」という回答が58%と最も多く、非製造業の中では、「個人サービス業」の6割近くが「悪い」と回答している。
「競争の激化」を指摘
こうした厳しい状況の中で、経営上の隘路を聞くと、本県の企業からは「同業他社との競争の激化」をあげる企業が最も多く、これに関連して「受注の減少」が第2位となった。
過去五年間の数値でもこの2項目はいずれも上位3位までにランクインしているが、前回までは「同業他社との競争激化」が2位だったのが、今回の調査では第1位となった。
また、この設問を製造業と非製造業の別でみると、製造業では「受注の減少」が1位で「人材(質)の不足」がこれに続いた。
これに対して、非製造業では、「競争の激化」が1位となり、「受注の減少」が第2位となった。また、「人材(質)の不足」は非製造業でも3位に入るなど、全体的に高い比率を示した(G―4参照)。
■経営上の隘路(静岡県内:複数回答)【G−4】
項 目
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順位
|
県全体
(%)
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順位
|
製造業
(%)
|
順位
|
非製造業
(%)
|
他社との競争の激化 |
1
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43.4 |
4
|
31.0 |
1
|
58.7 |
受注の減少 |
2
|
41.8 |
1
|
43.1 |
2
|
40.3 |
人材不足(質) |
3
|
38.9 |
2
|
40.2 |
4
|
37.2 |
人件費の増大 |
4
|
31.3 |
6
|
25.5 |
3
|
38.3 |
製品価格の引き上げ難 |
5
|
27.8 |
3
|
39.7 |
7
|
13.3 |
取引条件の厳しさ |
6
|
22.3 |
5
|
29.3 |
6
|
13.8 |
技術力・販売力の不足 |
7
|
16.6 |
7
|
17.6 |
5
|
15.3 |
仕入品の高騰 |
8
|
11.0 |
8
|
14.2 |
9
|
7.1 |
労働力不足(量の不足) |
9
|
6.4 |
9
|
5.4 |
8
|
7.7 |
「残業」が増加傾向に
従業員の週休形態をみると、県内の回答事業所では、全体の84%で、なんらかのかたちで週休2日制を採用しており、年間の休日日数も平均で103日となっている。
また、全体の8割近くの事業所で、週所定労働時間が40時間以下となっており(8年度の調査では27%)、週40時間制が着実に定着していることが伺える。
一方、年間の所定労働時間も、今回の県内数値では、平均2、028時間と、前回の数値より11時間少なくなっている。
しかし半面、一人当りの月平均残業時間は、県内の全産業平均で11・7時間と、前回の調査に比べて約1時間多くなった。
週40時間制導入で
「人件費が増大」
平成9年4月から、週40時間労働制に移行したことで、中小企業の経営にさまざまな影響が出ている。
こうした40時間制に関連した影響について、この調査でも聞いている。
その結果をみると、第1位にあがったのが「人件費等の増大」(45・9%)。2位は「残業の増加」(41・7%)、これに「生産性の低下」(23・3%)が続いた。製造業、非製造業の業種別にみても3位までにこの3項目があがっており、週40時間制導入の影響はこの3点に集約される結果となった(G―5参照)。
また、この40時間制をどのような方法で達成したかを聞いたところ、「一年単位の変形労働時間制」で対応したという企業が全体の半数以上を占めた。
労働時間短縮実現にどのような方法が効果的かという点では、「業務の見直し」、「省力化機器の導入」、「従業員教育の徹底」の順で上位3位を占めた(G―6参照)。
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注目される「勤務延長制度」と「再雇用制度」
定年年齢を設定したまま、その定年年齢に到達した者を退職させることなく引き続き雇用する「勤務延長制度」。
一方「再雇用制度」は、定年年齢に達した者をいったん退職させ、再び雇用する制度だ。
いずれも、定年を迎えた経験豊かな労働力を、企業が積極的に活用していこうというもの。
これは、来年の四月から定年を60歳以上とすることが法律で明文化されるなど、高齢者の活用を国が積極的に打ち出していることに加えて、企業自身も質の高い人材を求めていることも相まって、この二つの制度は今、各企業で注目を集めている。
では、こうした制度を、企業は現実にどの程度導入し、活かしているのか。
県内企業の回答を集計した調査結果では、全体の85%の企業がこうした制度を導入しており、「勤務延長制度」が28%、「再雇用制度」は42%の企業が導入している。
また、この両方をすでに導入していると回答した事業所も15%あり、この二つの制度を積極的に活用していることが伺える結果となった(G―7参照)。
ではこの両制度が適用される対象者の範囲はどうかというと、「勤務延長制度」では、「原則として希望者全員」を対象範囲とする事業所が四割、「会社で特に必要と認めた者に限定」している企業が44%を占める結果となった。
もうひとつの「再雇用制度」では、「会社で特に必要と認めた者」が全体の五割以上を占め、二つの制度の、適用範囲の捉え方の違いが浮き彫りとなった(G―8参照)。
さらに、こうした制度によって、企業にとどまった従業員の労働条件について聞くと、まず、仕事の内容については、定年前と「変わらない」とする回答が「勤務延長制度」では89%、「再雇用制度」でも74%と定年前と同じ内容の仕事がまかされていることがわかった。一方、週所定労働日数も、「勤務延長制度」で9割、「再雇用制度」でも8割の事業所で「変わらない」と回答している。
しかし、基本給については、「勤務延長制度」は5割強、「再雇用制度」では8割弱の事業所で「下がる」と回答しているほか、定期昇給も「実施しない」という回答が前者で58%、後者は62%近くに達するなど、賃金面では労働者にとってシビアな結果が出た(G―9参照)。
「就職協定廃止」の影響は?
企業の新規学卒者獲得のための過度の競争を抑制する「就職協定」が、今年廃止された。
この影響について各企業に聞いたところ、4割近い企業が「影響はない」と回答してきた。
また就職協定が廃止されたことによって、どのような対応をするかについては、「採用活動の時期を早める」、「中途採用を強化する」といった回答が3割強を示したが、「従来どおり」とした企業も4割近くあり、協定廃止によって採用活動が大きく様変わりする傾向は特にみられなかった。
新規学卒者の初任給と10年度の採用計画
県内の新規学卒者の初任給をみると、実数では、大学卒の技能系男子が191,574円、また女子も大学卒の技能系で171,571円と最も高い数値を示した。
一方、前回調査(8年度)と比較した“対前年比”では、短大卒の事務系男子が、対前年8.8%アップと最も高く(実数では、174,067円)、逆に最も低い数値を示したのが、専門学校卒の技術系女子で、マイナス15.3%(158,607円)だった(G―10参照)。
さらに、企業の平成十年度の採用計画はどうかをたずねると、県内企業で「採用計画あり」と回答した事業所は全体の38%。
かたや「採用計画なし」とした事業所は、42%強に及んだ。
この「採用計画あり」と回答した事業所の内容をみると、「高校卒」の採用を計画する企業が29%と最も多く、平均で一社当たり2.9人の採用を予定している。そして、「大卒」が17.7%でこれに続き、一社平均で2.1人の採用を計画していることがわかった。また業種別では、「採用計画あり」とする企業が、製造業では42.2%、非製造業では33.1%という結果だった。
最後に、県内企業の賃金改定状況をみることにする。
全国で賃金改定を行った事業は、回答企業の61%。県内では、67%が実施している。
この賃金改定の平均をみると、製造業の昇給率が2.49%なのに対して、非製造業は、2.36%と若干低い。
業種別で最も昇給率の高かったのが、情報サービスや広告業などで構成する「対事業所サービス業」で3.17%であった(G―11参照)。
■新規学卒者の初任給(静岡県内:加重平均)【G−10】
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高校卒
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専門学校卒
|
短大卒
(高専含)
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大学卒
|
男子技能系 |
161,520
1.1
|
175,947
6.1
|
176,318
1.7
|
191,574
−0.2
|
男子事務系 |
157,314
−1.9
|
173,000
7.3
|
174,067
8.8
|
189,201
0.4
|
女子技能系 |
149,100
−0.4
|
158,608
−15.3
|
150,883
−5.2
|
181,571
0.8
|
女子事務系 |
150,793
−0.2
|
156,750
−3.8
|
159,291
−2.7
|
175,653
−3.3
|
■県内企業の昇給額(加重平均)【G−11】
|
昇給額(円) |
昇給率(%) |
県 全体 |
6,457 |
2.44 |
製 造業 |
6,200 |
2.49 |
非製造業 |
6,951 |
2.36 |
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