静岡県中小企業団体中央会Shizuoka Prefectural Federation of Small Business Associations. |
昭和43年10月1日 |
CHUOKAI MONTHLY 2008 August No.657 障害者と共働 こだわりパンを製造販売ぞうさん企業組合
将来性豊かな地域静岡県の中西部に位置する菊川市。平成17年1月、菊川町と小笠町が合併して誕生。温暖な気候に恵まれた自然環境を活かし、まろやかで深みのある味が特徴の“深蒸し茶”の産地として有名である。 また、近隣には、東名高速道路、新幹線掛川駅、御前崎港、富士山静岡空港(来春開港予定)などを有しており、工業都市としても、将来性豊かな地域である。 当組合は、この菊川市でパンの製造販売や、自然食品の販売を行う目的で、平成10年3月に設立された。 国産小麦100%組合の一日は、朝四時半に始まる。多い時は、1日に500個のパンを焼くこともある。製造するパンの種類は、80種類以上。旬の食材を使い、毎月週単位で、工夫を凝らしたメニューを作成している。 「国産小麦100%など厳選した安心できる材料の使用、求め易い価格など、消費者の目線にたち製造している。また、障害のある人もない人も、共に楽しく働ける場づくりを目指している」。西家理事長は、組合活動の意義を説く。 パンの販売は、ファックスや電話による予約販売が中心。個数にかかわらず、自宅や職場・学校などへ配達を行う。 「旬の食材を使うことで、パンを通し季節感を楽しんでもらいたい。材料は、なるべく生産者がわかる無添加・無農薬の物を選んでいる。燃料費のアップなど、厳しい面も多いが、安全・安心だけは貫き通したい」とパン製造の責任を担う渡辺理事は語る。 団地組合へ販路開拓パンは、予約販売のほか、平日11時から16時までは、店頭でも販売している。 組合は、昨年から地元にある菊川工業団地協同組合の協力を得て、団地内の企業の昼食時間を利用した、パンの訪問販売を開始した。訪問企業は、現在2社。それぞれ、月2回訪問している。 「企業の担当者も、障害者との共働を理解していただき、販売に協力をいただいている。回を重ねる度、楽しみに待っていてくれる従業員さんも増え、新しい販売方法も軌道に乗りつつある」。渡辺理事は、その手ごたえを語る。 組合では、パンの販売ほか無農薬紅茶など、こだわりの自然食品の宅配事業も行っている。昨年、こうした商品を紹介するため、念願のホームページを開設した。 「団地企業での販売や、ホームページの開設など、事業実施にあたり、中央会西部事務所の協力が、大きな支えとなった」。理事長は、今後の支援にも期待を寄せる。 共に働く厚生労働省の調査によると、全国の障害者総数は約709万人。そのうち、就労対象と見られる18歳から64歳までの障害者は360万人。実際に、従業員5人以上の企業で働く障害者は、50万人とまだまだ少ない。 政府は、年齢や障害の有無にかかわらず、安心して暮らせる“共生社会”の実現に力を注いでおり、今後、中小企業への障害者雇用の促進が強く求められる。 現在、組合には2人の障害者が就労している。 「法人化前から、障害者と健常者が、尊重し助けあいながら、楽しく事業を重ねてきた。互いが愚痴を言うなど、本音で話しながら、コミュニュケーションを取ることが大切」と理事長は、共働のポイントを指摘する。 コミュニティビジネス今、わが国は、少子高齢化社会を迎えている。こうしたなか、「障害者支援」「介護サービス」「地域資源の活用」など、地域で解決しなければならない課題は、山積している。そこで、地域の課題を住民が主体となり、ビジネスの手法で解決する“コミュニティビジネス”が、今注目されている。 「地域には地域の良さがいっぱいある。多くの人が生きがいを感じ暮らせるように、今後も活動を続けたい」と理事長は語る。組合が先進的に取り組む、コミュニティビジネスの広がりに期待したい。
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