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クローズアップインタビュー

林業振興と環境保全の共生で森林を守る
森林の大切さを説く「山のプロ」

清水国産材加工事業協同組合
片平成行理事長

「いま、日本の森林は本当に危機的な状況にあるんですよ」。明治の初めから続く山林家に育った“山のプロ”は嘆息する。

「保全や整備がされず荒れ果てた山の多いこと。このまま荒廃を放っておくと取り返しがつかなくなる」。

静岡市清水区と山梨県境を源流とし、東日本で最も早く鮎釣りが解禁されることで知られる清流興津川。

その興津川を囲むように群生する杉や檜など、豊富な森林資源を有効に利用するため、森林組合を中心に、林業者や製材業者らが組織化。共同加工場を立ち上げ、20年が経つ。若き山林家として組合設立に参画し、15年前から理事長を務める。

組合が扱う間伐材は、垂木や束、大引きなど住宅用の部材として用いられる。しかしそれらは、柱や土台のように家の基礎を形作るものではなく、床や壁面のように人目に触れることもない。

「野球に例えれば、6番、7番バッター。ヒットは、そこそこ出るが、あまり点に結びつかない(笑)。だが、絶対に必要な役どころです」。

組合が毎年主催する大工塾では、建築士が教えを請うほど、木造住宅にも精通する。

組合の理事長職に加え、県林業技術者協会会長や間伐材等の利用を通じた森林整備を推進するNPO法人の理事として、林業技術者の育成や 森林整備の重要性を訴え続ける。

「手をかけ過ぎても、かけなくても山は守れない。山に携わる者は、木材産業振興と環境保全をバランスよく共生させていく必要がある」。

4年前から、静岡市教育委員会の「スペシャリスト派遣事業」の講師として、市内の小学校で子どもたちに環境や森林の大切さを説く。

「小学生の環境問題に対する関心はとても高い。心がけるのは、山の現状を正確に伝えること。そして木を、山を守るために、何ができるのか、を子どもたちの目線にたち、分かりやすく伝えたい」。

現在、組合加工場には、6人の従業員が働く。いずれも地元出身だ。

「地元の若者に就労の場が提供できたことも大きい。Iターンで組合に就職し、今では工場長など現場の中核を担う人材に成長した。人が育ってくれたのが、本当にうれしい」と目を細める。

東京農大林業科を卒業後、京都北山に3年間“山づくり”の修行に出た。

「全国に大学時代のネットワークが張り巡らされていて、どこの山の状況も電話1本で分かるよ」。

趣味は読書。その博覧強記ぶりは、「本を読むときは、必ず地図、歴史事典、時刻表を傍らに置く」ことで培われる。