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特集

組合特定問題実態調査にみる
中小企業の事業継承とM&Aの取組み

全国の年間廃業数約29万社のうち、後継者の不在を理由とする廃業は約7万社に達し、それに伴う雇用喪失が約20万〜35万人に上ると推定されるなど、事業承継問題が経済・社会に与える負の影響は小さくない。こうした中、その解決策のひとつとして注目されているのが、「M&A」(“Merger & Acquisitions”の略。企業の「合併と買収」を意味する)だ。昨年、わが国の成約件数は2696件。10年前の3.5倍に増加した。

M&Aというと、新聞紙上を華々しく飾る大企業同士のM&Aが連想されるが、わが国のM&Aの約7割が未上場企業の関係するもの。統計に表れない中小企業同士のM&Aはさらに多いと考えられる。

特集では、昨年度、本会が実施した組合特定問題実態調査の結果をもとに、事業承継とM&Aの概要やポイントを解説した。経営戦略の手法のひとつとしてお役立て頂きたい。

県内中小企業における事業承継とM&Aの取組みに関するアンケート調査の概要

対象 県団地協議会傘下中小企業496社

調査時期 平成19年9月21日〜10月19日

回答数 212社(回答率42.7%)

将来的な事業承継の考え方

将来的な事業承継のあり方については、「後継者(子供や従業員等)に事業を引き継がせたい」とする企業が89.6%と圧倒的に多く、ほとんどの企業で、次世代に事業を引き継ぎたいと考えていることが分かる。一方、他社への譲渡を希望している企業は4.7%、廃業予定の企業は2.8%と少数で、比較的売上規模の小さい企業が多い。

後継者への事業承継について

後継者に事業を引き継ぐタイミング

後継者に事業を引き継ぐタイミングとしては、「後継者が十分に成長したと判断したとき」との回答が43.2%と最多で、「後継者がある年齢に達したとき」(14.2%)と合わせると、6割弱が後継者に事業承継のタイミングを合わせていることが分かる。このことから、スムーズな事業承継には、十分な後継者教育が必要と言うことができよう。

一方で、経営目標の達成や体力・気力の衰えなど、経営者本人を中心にタイミングを計っている企業は約3割となった。

年齢で事業承継時期を決めている場合、後継者の年齢は、平均37.7歳、経営者本人の年齢は平均65.5歳であった。

後継者決定に当たって重視すること

後継者を決めるときに重視することとして、「非常に重視する」「多少重視する」「あまり重視しない」「まったく重視しない」の4段階で評価してもらった結果、「高い経営能力を持っていること」(61.6%)や「従業員からの人望が厚いこと」(51.1%)を「非常に重視する」としている。

後継者にとっては、子供や親族であることも重要であるが、その上で、経営者としての能力も要求されている。(図表1)

図表1 後継者決定にあたって重視すること

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後継者の決定状況

後継者については、51.6%が「決定している」、48.4%が「決定していない」と回答しており、やや「決定している」企業の方が多かった。

社長の年齢別に後継者の有無をみると、年齢が上がるほど決定している割合も高い。

特に、60歳代では「決定している」が「決定していない」を逆転して、約7割の決定率になっている。

しかし、事業承継時期にあると思われる社長の年齢が60歳以上の企業でも、60歳代で32.4%、70歳以上で16.7%が決定していない状況にある。

企業規模別の後継者の有無は、売上規模別では、売上規模1億円以下の企業で「決定している」が76.5%に上るなど決定率は高いが、1億円超の企業では、5割前後にとどまっている。

従業員規模別でも、9人以下の企業で「決定している」が76.7%となっており、小規模企業で決定している割合が高い。

後継者の属性や続柄

後継者が決定している場合の属性や続柄は、「子供」が86.7%と大多数を占めた。

子供以外を後継者に決定している理由では、「子供がいないため」(23.1%)や「子供がまだ若いため」(15.4%)、「子供よりも優れた能力・資質を持っているため」(15.4%)などが挙がった。(図表2、3)

図表2 後継者の属性や続柄図表3 後継者が子供以外の理由

後継者が決定していない理由と今後の対策

後継者が決定していない理由は、「まだ後継者を決める時期ではないため」とする企業が64.1%に上った。

「子供がいないため」や「子供が後継者になることを拒否したため」など、本当の意味での後継者難と思われる割合は、全体の14.2%と推測される。(図表4)

今後の対策としては、「社内から新たな後継候補者を探す」(30.4%)、「子供や後継候補者を説得する」(28.3%)とする企業もあるが、「対策はまだ決めかねている」(33.7%)のが現状のようだ。(図表5)

図表4 後継者が決定していない理由 図表5 今後の対策(複数回答)